いいですか。世の中のお父さんお母さん。 子供が何かをねだる時は、一体のそれがなんなのか。 今必要なのか。 自分に受け入れる状況がきちんとできているか。 を考えて行動しないといけません。 そして、受け入れられるからといって、過度に子供の願いを叶えてやるのもあまりよくないと思います。 何でもかんでも叶えると、なんでも自分に与えてくれるんだと思って我侭で傲慢な人間になってしまいますので、節度を持つことが必要です。 そして大人として、保護者として。子供に尊敬されるような大人を目指すことも必要です。 そう。いい大人が養い側にねだるのは・・・・どうかと思うんですよ。 「新八・・・俺は、どーすりゃいいんだろう・・・」 助けを求めるのも、どうかと思うんですよ。 まあ、僕は小さな子供でもないし、金銭面でなければ相談にも乗りますよ。 多少の人生相談にだってのってあげられると思います。 だからいいんですよ。 いいんですけどね。 隣りに見知らぬ女の子座らせて、手を繋いで。 それで「どーすりゃいいんだろう」とか言われてもね。 「知るかああああぁぁぁぁぁぁぁ!! なんだよコレ!なんですかコレ! 当てつけか!!?彼女なしの人間に対する当てつけなのか!!!ケンカ売ってんですかアンタ!!」 腹が立つ以外何もできない訳で。 「いや。いやいやいや。そうじゃないのよ?そうじゃなくてね」 「どの口が言うんだオイィィ! あんたがどこで誰とイチャイチャしてようが知ったこっちゃありませんけどね! 見せつけんなよ!!彼女なしがどれだけその行為で傷つくと思ってんだよ!! どれだけの人間敵に回したと思ってんだよ!!」 「いや、いやいや。彼女じゃないよ。まだ。うん」 「あーあーそうですか!!そんなに死にたいかこの野郎っ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」 今、なんて? 「と、いうか・・・あの。どうしてこうなったのか。ワタシノホウガキキタインデスガ・・・」 そして、困り果てた顔で目を伏せたのは、銀さんが連れてきた女の子だった。 え? あれ? 「あの・・・いい加減、手を離してもらえませんか・・・?」 「それは絶対に嫌だ!」 途方に暮れた顔で銀さんを見る女の子の願いを、銀さんは真顔で断った。 見事に必死な顔だった。 目が怖いです。銀さん。 鼻息粗すぎて不愉快です。銀さん。 「今銀さんがどんな思いで手ぇ繋いでるのか分かってないでしょうっ! どんだけドキドキしてるか分かってないでしょっ! なんで手離せとか言えるのっ!?もったいないっ」 「いや、だから。手が汗だらけで気持ち悪いんだけど・・・」 白い目で目を合わせずに呟いた女の子。 銀さんは「キモっ・・・!!」と言われたことを反芻し、大仰に手で顔を覆って嘆いてみせる。 もちろん手は、握ったままだ。 「もう駄目だ。銀さんハートブレイクした。魂も粉々になった・・・男心ズタズタにされた・・・」 「え、えええ?」 大仰な銀さんに女の子はついていけずに、混乱している。 っていうか、ほんと。どうしちゃったんだこの人。 「銀さん。正直ホントに気持ち悪いです。なにキャラにないことやってんですか」 「どこが!?どこがキャラにないって!? こんな男前、他にいないだろ?」 「いや。あんたマダオな主人公なだけだから」 「んだとコラ!お前見たことあんだろ!銀さんのきらめく姿を見たことあんだろうが!!」 「どこの別番組ですかそれ」 どんなに無駄に背景キラめかせて歯を輝かせようが、貴方のマダオ度は不動のものですよ。 そう言ってやれば、銀さんはちっとメンチ切ってくるヤクザみたいな顔をして拗ねた。 そしてやっぱり、女の子との手は離れなかった。 「自己紹介まだでしたね。僕は志村新八っていいます。そっちのウザいのは一応ここの社長で、坂田銀時です」 「あ、です」 「さんですね。それで、どうしてこちらに?何か依頼ですか?」 「いえ、そうじゃなくて」 どうしようもない大人を無視して進めることにすると、さんはちら、と銀さんを見た。 僕も一緒になって銀さんを見ると。 「俺がナンパした」 僕はにっこりと銀さんへ笑って。 「すみません。警察ですか?実は誘拐犯がここにおりまして。ええ。はい。早くしょっぴいてください」 「おーーーーーーーーーい!新八くーーーーーん?? 別に銀さん犯罪してないからね!!っていうかここに連れてきたのはちゃんと同意の上だからね!!?」 「え?どういうことですか?」 受話器を置いて、さんを見る。 さんは俯き、銀さんが手を握って促すと、事の顛末を話しだしてくれた。 「実は・・・家に帰れないんです」 さんが話すことは、僕たちの中の常識でも少し・・・いや、かなり外れていた。 トリップ世界とか。 異世界に来てしまったとか。 その後、突然真選組にイチャモンつけられて捕まって。 勘違いだと分かってくれたけど、それでも怖くて逃げだしてしまったこと。 その後に、自分の現状を省みて途方に暮れたこと。 そして、銀さんに出会ったこと。 銀さんにはここに来る前に事情を説明していて、それを聞いた銀さんが強引にここに連れてきたらしい。 さんは仕方ないけど、銀さんまで意図せず連れてきたのは、どうかと思う。 僕が銀さんに対して軽蔑の眼差しを送っていると。 「信じて、もらえないですよね」 自分に向けられたと思ったのか、さんは、小さく俯いてしまった。 「ああっ、いえ!さんの話を信じない訳じゃないですよ!」 焦ってそう言うと、さんはきょと。と目を瞬いた。 「信じてくれるんですか?」 「そりゃあ、突拍子もない話ですけど、開国からこっち、やれ宇宙人だなんだって変わりすぎて、まあこんな世の中トリップもあるよなーとか思っちゃうわけで。 それに、銀さんも信じてるからここに連れてきた訳でしょう?」 銀さんを促すと、こくこくと頷く。 「つーかよ。こんな話、ホラにするには馬鹿げてるだろ。それに、こんな女の子を放っておくには、この町は綺麗でもねーからな」 「同感ですね。それで、銀さんはどうしたいんですか」 「――――――――万事屋で雇いたい」 「あー・・・・えと。それは却下でお願いします」 格好良く決めた銀さんの発言は、当のさんによって撤回された。 「っなんでだよ!!せっかく銀さんが柄にもなく男前な発言したのに!!」 「えっあ、うーん。すみません。でもちょっと・・・かなり苦労しそうというか・・・(死ぬ目には会いたくないっていうか)」 「ひどいっ・・・そんな目で見られてたのかうちは・・・!」 「素晴らしい観察眼です。さん」 「新八くぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!??ちょっと聞き捨てならないよそれっ!」 「あの、でも行く所がないのは確かなので・・・泊まらせていただけると嬉しいです」 「え、うーん・・・なら僕の家にきますか?ここよりは安全だと・・・」 「銀ちゃーん!今帰ったヨー」 「あ、神楽ちゃんおかえり」 「神楽ちゃん??」 「うん。ここの最後の従業員だよ」 「おお!?お前誰アルか」 その後は自己紹介とかここの話とか、なんだか色々決まったり全然決まらなかったりして。 「ちくしょおおおおおお、結局グダグダじゃねえかあああああああ!!」 銀さんの叫びがオチとして歌舞伎町の空に打ち上げられた。 この日から万事屋の一員に一人、女の子がやってきた。 普段は近所でバイトして、家事は大体買って出てくれた。 危ない事件の時はお登勢さんの所にいてもらって、怪我して返ってきた時は心配して、時々怒ってくれて。そんな普通の子。 これからどうなるのか。 それは誰にもわからない。 ・・・でもできるなら、ずっと一緒にいてほしいなって、思ったんだ。 |