<喜んでくれるなら何でも贈り物> 「おねーちゃん!こっちに柏餅3皿とほうじ茶」 「ちゃん、これ持って行って〜」 「はーい!」 うひー、忙しい! 子供の日に臨時バイトに入ったお茶菓子屋で、忙しく働く。 このお茶屋さんは、今日は子供の日にちなんで柏餅フェアを行っている。 いつもより安い柏餅につられてくるなんて・・・いつの時代も同じだね〜 それにしたってこの客入りはすごいな〜 お昼を過ぎたあたりからお客さんが入れ替わり立ち替わりして、延々と満席状態が続いてる。 ぜんぜん休む間がないなあ!もう。 なんて悪態を吐く間もない。 「おまたせしましたー!」 何席分の柏餅と飲み物を持って丁寧に、かつ素早くふるまっていく。 その隙に新しい注文を受けて厨房にオーダーして、飲み物入れてを繰り返し作業していく。 「ちゃーん、ハムサンド上がったよ」 「あ、はい。・・・って」 クリームソーダのトッピングをしている上で声がかかって顔を上げると、柏餅にマヨネーズがどっぷりとかかったものが置かれていた。 「店長・・・これ、柏餅・・?」 「え?・・ああああ!!」 まさかの事態に茫然と突っ込むと、次の作業に移っていた店長が慌てて皿を覗き込んだ。 「うわ・・・間違えた・・・」 どうやったらこうなるんだ。 と、ものすごく突っ込みたいけど、どよーんと残念に嘆く店長があまりにかわいそうで口をつぐんだ。 キッチンを覗き込むと手元にハムがのってサンドされていないパンがあった。 どうやらこっちと間違えたらしい。 「どうしようこれ・・・」 捨てるしかないよな〜・・・でももったいないな〜と項垂れる店長。 確かにもったいないよね。マヨの部分をどかせれば食べられると思うし・・・・ その時、窓の外にいた人物に、あたしは目を光らせた。 「店長!それちょっとください」 「え?ちゃん??」 店長からマヨ柏餅をひったくって、あたしは外へ飛び出した。 店内も外も通り過ぎて、裏通りへ駈け込む。 そして見つけた背中めがけて突進した。 「土方さーん!!」 大声で呼びかけると、土方さんは振り向き、ついでにその隣の沖田も向いてきた。 ちいい。土方さんだけでいいのにっ 「か。どうした」 まあしょうがないかと、あえて無視する方向で見ないようにして、 「これ。もらってください!!」 マヨ柏餅を押し付けた。 「っ!?」 「うわー、これはまた土方さん好みのトッピングで・・」 隣うるさいっ 「、なんでこれを俺に?」 うっ、し、しまった・・・!まさか理由を聞かれるとは・・っ かといって素直に失敗したものの始末です。とも言えない。 えーと。えーっと・・・・ あ、そう!そうだ!! 「お誕生日、おめでとうございます!!」 「っ!」 「・・・・・」 ものすごく苦し紛れに、ひきつった笑顔を貼り付けて言いきった。 目を丸くする土方さんと、疑いの眼差しを見ている沖田。 反応が怖くて、土方さんの手の中にお皿を押し付けて、あたしはそこから走り去ることにした。 「そ、それじゃ、失礼しますっ お仕事頑張ってください〜」 押しつけてごめんなさーい!! 心の中でそう懺悔して、お茶屋へ全速力で戻った。 「総悟・・・胸がときめくんだが・・・」 (こんなもの押し付けられてときめくのは土方さんだけでさぁ・・・) 胸を押さえて悶絶している土方さんと、白い眼でそれを見つめ、自分を素無視したあたしを、どうやって報復しようかと画策している沖田のことを、あたしは知らない。 |