<誕生日の約束> 目をあけると、目の前にライがいた。 あどけない顔で眠っている姿が愛おしくて、昨晩から回していた腕でライを抱きしめる。 「ん・・・?」 ほとんど覚醒に近かったのか、その僅かな身じろぎでライは目を覚ました。 深い水のような蒼の中で揺らめく不思議な色。その目がルルーシュをとらえて、淡く弧を描いた。 その笑顔へ口付けて、ルルーシュはライの頬を撫でた。 「おはよう。ライ」 「おはよう。 誕生日・・・おめでとう。ルルーシュ」 あいさつの後につけられた言葉に、ルルーシュは瞬いた。 誕生日? 「ああ、そうか。そう言えば・・・」 今日は自分の誕生日だったか・・・ 自分の特殊な日ほど、あまり意識しないものだ。ナナリーやライにとっての特別な日なら何があっても忘れないのだが。 空を仰いでなんとも言えない顔をするルルーシュに、ライはくすくすとはにかんだ。 「やっぱり忘れてた」 「忘れてたんじゃない。意識していなかっただけだ」 指摘されてむくれると、ライはさらに深く笑った。 それが癪に障って、ルルーシュはライにのしかかった。 「わ・・・ちょ・・・ちょっと、ルルーシュ」 「うるさい」 笑われた仕返しにライのあちこちにいたずらして、くすぐったさに身をよじるライを封じ込める。 「ん・・・ん・・・・・」 封じるための啄ばむ行為は、愛撫へと変わっていく。しばらく二人はその行為に溺れていたが、やがてライはルルーシュの束縛から逃れた。 「どうした?」 「こういうことをしたくて言ったんじゃないんだ」 俺はそれでも構わないがな。と呟くが、ライが目を眇めたのでとりあえず引き下がった。 ライはベッドサイドへ手を伸ばして、何かを手に取った。 「ルルーシュ、手を出して」 言われるまま差し出された手の上に自分のそれを重ねると、ライはルルーシュの指へ持っていたそれをはめた。 シンプルな、シルバーの指輪。 ライの薬指にはまっているものと同じデザインの指輪が、ルルーシュの薬指にもある。 「約束。してたでしょう?」 茫然と指輪を見つめるルルーシュの手を取って、ライはその指輪に口付けた。 「ようやく渡せた」と呟かれて、一気に自分の顔が紅潮するのをルルーシュは自覚した。 そしてその反応に、またライがくすくすと笑う。 「やっとルルーシュが僕の物になった気がする」 そのまま肩へ寄りかかられて呟くライを抱きしめる。 「俺はずいぶん前からお前に依存し続けているが?」 「それを言うなら僕なんて、もっと依存してるよ」 お互いさまという奴だな。と嘯いて、二人は互いに笑いで肩を震わせた。 「ルルーシュ。生まれてきてくれてありがとう」 「ああ。ライ。お前に出会えて、本当に良かった」 今この時を、永遠に。 二人で生きていこう。 <終> |