目を開いた。
目映い光が差し込み、視界を白く染め上げようとする。
その光が目を焼き付けるように蝕み、その痛みに耐えるために雫を零す。


とても、長い夢を見ていた気がした。


辛く、苦しく、悲しく、それでも、優しい光がいつも遠くに見えていた。
振り返れば暗闇ばかりのその世界で、ただ1つの希望だった。




「おはよう。ルルーシュ」

リビングへ行くと、銀髪の青年が振り返った。すぐ後に愛妹が挨拶し、二人へ向かって返す。
異変に気付いたのは、青年のほうだった。

「どうか、したのか?」

妹も不安そうな顔をする。
自分でも噛み砕くのに難しいこの感情を察する青年に、苦笑を浮かべ、大丈夫だと首を振った。
青年はほんの少しいぶかしんだが、そのまま流してくれた。
理解の早い相手で助かる。
それに、打ち明ける前にもう少しだけ、今の状態でいたかった。


夢の内容は、幸せで、救いがあるゆえに、悲しかった。


自分が望んだ幸せとかけ離れた、けれどもう1人の自分が選んだ幸せ。
願いが叶った自分は確かに幸せであった。


それでも、と思う。


目の前にいる愛する妹と、もう大事なものは作ることはないと思っていた自分が手に入れたいと願った大切な人。
友人も、家族も、守るべきものが増えたこの世界が、かけがえのない幸せだと確信する。


世界に光を照らすことよりも、大切な、本当の幸せ。


あの夢の結末を否定することはしないけれど。


(なあ。もう1人の俺)


たった一人で巨大な悪意と、僅かな愛に包まれ、世界から去った夢の自分。



彼に伝えよう。



今の想いが、どんなものかを。





  了