lacrima 寒い日だった。 芯から冷える冷たさと、生き物の息吹きが吸い込まれてしまいそうな静けさ。 建物の中はそれでも息をつける程度には暖かくて。 ほっとするようなぬくもりが、癒してくれて。 だけど。だけどさ。 悲しくて、たまらないよ。 「そんな顔をしないで。」 骨と皮のしわくちゃな手が、優しく慰めてくれる。 労るべきは貴方じゃないか。 それなのに自分は何一つ気のきいたことも言えなくて。 おろおろ狼狽えて。 見てることしかできなくて。 嫌だ。何もできていないじゃないか。 何一つ、この身は与えられないじゃないか。 「貴方の手、私は大好きよ。温かくて、力強い手」 違うよ。この手はそんな褒められるものじゃないよ。貴方の手のほうが、大切なんだよ。 「シスター・・・マンマっ」 大切なものを、この人は与えてくれた。 振り回して壊すばかりのこの手を、どうすればいいか教えてくれた。 マンマ。 自分も、与えることができる人間になれるかな? 奪い続けていたこの手で、癒すことができるのかな? (見つけたいんだ。そんな自分を) |