lacrima








寒い日だった。



芯から冷える冷たさと、生き物の息吹きが吸い込まれてしまいそうな静けさ。
建物の中はそれでも息をつける程度には暖かくて。
ほっとするようなぬくもりが、癒してくれて。





だけど。だけどさ。


悲しくて、たまらないよ。





「そんな顔をしないで。



骨と皮のしわくちゃな手が、優しく慰めてくれる。



労るべきは貴方じゃないか。

それなのに自分は何一つ気のきいたことも言えなくて。



おろおろ狼狽えて。
見てることしかできなくて。



嫌だ。何もできていないじゃないか。
何一つ、この身は与えられないじゃないか。




「貴方の手、私は大好きよ。温かくて、力強い手」




違うよ。この手はそんな褒められるものじゃないよ。貴方の手のほうが、大切なんだよ。




「シスター・・・マンマっ」




大切なものを、この人は与えてくれた。
振り回して壊すばかりのこの手を、どうすればいいか教えてくれた。












マンマ。


自分も、与えることができる人間になれるかな?

奪い続けていたこの手で、癒すことができるのかな?














(見つけたいんだ。そんな自分を)




2010.4.26