3 tre


 








目の前で崩れ落ちたほそっこい身体は、ジュリオのナイフで貫かれた両手を残して地面に倒れ伏した。
その手もすぐに重力に従い落ちて、地面に投げ出される。

全身泥だらけ、血だらけ。背中なんて、ぼろぼろになった服の残骸が張り付いてるような状態だ。

今の今まで動いていたのが嘘みたいな、青い顔。力のない身体。

「おい。おい!」
「ジャンさん・・・!駄目です。はなれて」

俺はそいつに近寄って、安否を確認しようとして、ジュリオに引きとめられた。

「何言ってんだジュリオ!っつーか!なんで攻撃した!?」
「っ・・」
「それはこっちのセリフだ。こいつは今さっきまで港で大暴れしてた元凶だぞ!」

俺の非難にジュリオが竦む。それを庇ったのは、駆け寄ってきたルキーノだ。

「マジか!?」

その言葉に、俺は目を剥いた。

ベルナルドへ報告された、港市場の騒ぎを引き起こしたのがこいつ!?こんな俺より細くてちっこいのが!?

「華奢な身体してるくせに、正体は怪物ゴリラだぜ。大の男を何人も片手で振り回して、立ち回ってやがった」
「はぁ!?」

ちょ・・・うちの親父じゃあるまいし。なにそのコメディ。

「ジャン、さん。殺しますか?」

ありえない情報を貰って呆けると、ジュリオがやけに焦燥した声音で聞いてきた。


いつも汗一つかかないジュリオの額に、雫が流れている。


最強のマッドドッグも疲れさせるって?
こんな、やつが?


一体何の冗談だと、気を失っているそいつを見下ろした。


真っ黒いザンバラの長い髪。
その中にある、ちょっと整った顔。
綺麗な白い、さわったら気持ちよさそうな肌。


俺が助けてやった、生き倒れてたちびっ子。



野生動物だかノラだかな行動をしていたこいつが?
さっき俺へ、本気で安心したように笑ったこいつが?



カチリと、何かが俺の何かを叩いた。




「いや。こいつは本部に運ぶ」
「おい。正気か?!」


俺の傍にいる女神が囁く。


「始末すんのは、身元はっきりさせてからでも遅くはナイダロ?」



ラッキードッグの運が、こいつに反応していた。















(その幸運は誰のためか)


こんな感じで色んな視点をうろうろしていきます。
名前変換は一体いつになったらできるんだorz
2010.4.22