implorare 気持ちのいい朝だな 今まで見たどれよりも澄んだ青空が、そして何もない地平線が目の前にある。 何度見たことがあるはずなのに、初めて見たような感動すら感じていた。 後ろを振り返ると、今まで育ってきた見慣れた町並みがある。 朝日と共に外に出た空は本当に綺麗で、この街すらも綺麗なものに見えた。 見納めにはもったいないくらいだ。 さてと・・・いくか 身一つで、持つものは中身がない、ペラペラのザックと突っ込んだ地図。それから、なけなしの金。 旅に出るには心許ない。 それでも気分はこの青空と同じくらい晴れやかで、気持ちがいい。 嘘みたいに気持ちがいいんだ。 思えば住みかは転々としていたものの、この街から出て暮らすのは初めてだ。 これからどうなるんだろう? どんなことが待ってるんだろう? わくわくして。 「――――っ・・・・・・・・ひっ」 体の中が一杯になって、涙が零れた。 「ぅえっ・・・・・・・・ぇっ・・・・」 なんで、泣いてるんだろう? 泣いたのなんて、シスターが死んだ時以来だ。 悲しい筈じゃないのに、あの時以上の涙が溢れる。 胸も苦しくて、締め付けられる。 息もうまく吸えないそれは、全然止まる気がしない。 ガキみたいに大泣きして、電柱以外何もない、コンクリの道を歩く。 何もなくなった自分のような、何もない荒野。 この先に、何があるんだろうか? 自分に何が起こるんだろうか? また繰り返すのか? それとも今までが嘘みたいな人生になるのか? でもきっと、自分は同じことをするんだ。 どんなに受け入れてもらえなくても、たった一人の信じられる人が現れたら、馬鹿みたいに必死になる。 この街で、自分のそれはシスターだった。 シスターが愛した街だから、平和が大好きなシスターがいたから。 シスターが悲しくならないように悪者をやっつけた。 結果的に、それはシスターを失うことになったけれど。 守ることを知らなかった、自分のせいだ。 消すことばっかりで何もない、自分の行いのせいだ。 だから、罰なんだって思った。 それを償いたいばっかりに、カラ回って。 また誰か傷付けて。 何一つ、返すことができてなくて。 もしもまた、信じられる人が現われたなら。 今度こそ、守ることができるだろうか? 素直に自分を褒めることができるだろうか。 どんなことになってもいいから、受け入れてくれる場所があったなら。 きっと自分は、今度こそ死ぬまで守り抜こうとするんだろう。 (どうか、どうか・・・・) |