40 quaranta












どーすっかな。


と、ガラにもなく考える。
極上のフカフカベッドの上で、俺は、頭を悩ませていた。


いや、どうするもこうするもない。のだ。
実際。
選択肢は一つだけだ。


俺は、最高で最低で最悪な、いつもの仕事をこなすだけ。
それにあいつも巻き込んで、暴れるだけ。


何も変わりゃしない。
変えようがない。


わかっている、のだが。



「・・・・・・・なんでヘコんでんだよ、俺」



漏れる声が情けないこと。情けないこと。
涙が出てきそうだね。出ませんけどね。


もやもやする俺の、胸のうちの元凶はわかっている。
どうしようもない。馬鹿な俺の自己満足だ。


あいつの顔を陰らせたくねーとか、青春時代の俺すら思わなかった、甘ったるくて、痒くて、吐きそうな・・・・・・
・・・・・・そういう気持ちになることは、きっとないんだろうと思っていたのに。


見事に俺の、心の平穏を奪ってくれちゃって、さあ。

すごいね。



そうやってモヤモヤしている俺へ別の俺が嘲笑ける。


あいつの昔話に同情してんのか?


馬鹿にした冷たい笑顔で俺を見下ろす俺へ、心の中で否定した。



いいや。違う。
もっと前からだ。


いつの間にか、俺は。

この役職になってから、きっと持たないと思っていた気持ちを。

気が付いたら、あいつに抱いていた。



それがいいことなのか。

馬鹿な事なのか。

どうにも今の俺には、判断できそうにない。



なら、あいつを放り出すか?

それとも遠ざけるか?




(俺は、・・・俺には・・・)




目を閉じて、俺は母親の形見のラッキーリングを握り締める。




なあ、答えなんて、出てるだろう?




「俺は――――」





呟いて、浮かぶあいつの、泣き顔みたいな笑顔が、―――――キリキリ、ジワジワと、俺の心臓を押しつぶした。













(ひきかえすには、もう遅い)




2013.8.29