9 nove 身なりを整わされて、次にジャンに連れられて来たのは、何もかもが高級です。と豪語するような、絨毯、テーブル、ふかふかな椅子がある部屋だった。 ジャンと自分が向かう先には6人の男たちが座って待っている。 どいつもこいつも威圧感が凄まじい。赤毛とメガネ、優男はまあもうわかっていることだからいいとして、さらにその奥にいる親父と爺さんが、殺気とはまた違う押しつぶされそうな重圧を向けてきていた。 ワーオ、大歓迎って感じだな。なんてそらとぼけてみる。 ジャンが目で着いてくるよう合図して、一番奥の椅子に座った。その斜め後ろに立って、ジャンを伺うと挨拶しろと振られて、居住まいを正し一礼した。 「・、デス。よろしくオネガイシマス」 「つーわけで、これからこいつが俺の専属部下だ。よろしく頼むな」 「はぁ?なんでそんな話が。つーかそいつだr」 「ベルナルドから報告は受けている。なかなか突飛なことをしてくれるな。息子よ」 「いやいや。どこかの親父ほどじゃないし」 ジャンの言葉に誰かの抗議が聞こえたが、茶色いスーツを着たおっさんがニヤリと笑って被せて発言した。ジャンもなかったようにそのおっさんへ返す。 そして、ジャンは自分へここにいる男たちを紹介していってくれた。 まずさっき遮られていたチンピラっぽいのが幹部のイヴァン・フィオーレ。こいつと優男と赤毛とメガネの4人が幹部だそうだ。 優男の名前はジュリオ・ディ・ボンドーネ。幹部の中で唯一の戦闘員だそうだ。・・・どーりでうすら寒い訳だ。 赤毛の大男はルキーノ・グレゴレッティ。女の子が頬染めそーな顔してるけど、自分としてはあのガタイのでかさに目が行く。 メガネの長髪はベルナルド・オルトラーニ。幹部の筆頭で組の司令塔。なんかインテリ?な仕事が主らしい。 それから、なんだかジャンと同じく楽しそうな雰囲気のおっさんと、まじめそうな爺さんが顧問?とかで、おっさんがアレッサンドロ・デル・サルト。爺さんの方がトーニオ・カヴァッリ。いわゆる相談役なんだそうだ。 ・・・うん。無理。覚えられない。 一通り紹介が終わったあとで名前を反芻しようとして、2人もフルネームで言えなかった。ま、おいおい覚えよう。 「だが大丈夫か?護衛での心配はないらしいが、素人だろう」 おっさんがまた聞いてきて、どきりとなった。 腕っぷしなら自信があるが、昔から自分は考えなしって言われ続けていた。よく周りにも被害をまいてしまう。 そもそも前の街から出ることになった理由もそれだ。 「まー、今の俺は書類整理と面会、会合とかしかないし。ところで、字とか読める?」 「英語とイタリア語の読み書きは平気だ」 ジャンがのんびりと聞いてきて、それなら大丈夫だと頷いた。読み書きは孤児院にいた時に、今の時代できなければ働けないと、計算と一緒に習わされた。 「ワォ。イヴァンより有能じゃね」 「んだとゴラァ!!」 満足そうにジャンが言って、一番に噛みついたのは言われたチンピラ――イヴァンだった。 「つーか!誰だこいつはっ。俺ぁ話なんざひとっつも聞いてねーぞ!!」 そして自分を指さして、さらにジャンに噛みついている。 当のジャンはのほほんと「だから今言ったじゃん?」と笑ってからかっていた。 「ふざけんなボケェェェェエエエエエ!!!」なんて叫んでるイヴァンが哀れだ。 でも、テンポがよくて見ててなんか楽しい。 もっと続かないかな。と思っていると、ジャンがこっちを振り仰いでチンピラを指さし、 「いいか。。この叫んでる馬鹿がイヴァンだ」 「分かった。この馬鹿がイヴァンだな」 「てめえらああああ!!ぶち殺すぞこの野郎ぉぉぉぉぉぉ!!」 再び吠えたイヴァンが、やっぱり楽しくてしょうがなかった。 (いーところに入れてよかったかな) |