<落ち込んだ時は>







あ、また見てる。


横から感じる視線に、ジャンカルロさまは気づいていた。

広いリムジンの中で、つまらなそうに外を見ている俺はそのままそちらに顔を向けず、隣の様子をうかがった。

隣に座る俺の部下は、何かを訴えたいけれど、自分の中で堪えているような、そわそわした様子だった。
その雰囲気が落ち込んでいるのも、手に取るようにわかる。

そのへん、こいつは感情が顔どころか全身からにじみ出る。
嘘を付けない生き物なのは、美徳か欠点か。
わかりやすくって、楽だけどね。


今も、何を思っているのかは、結構簡単にわかる。


本人が行動を起こすことはまれだから、答えに行き着くのは結構時間かかったけど、おんなじ行動をジュリオがすることがあるから、きっとこんなだろーなーとはわかった。

あと、基本俺とこいつって、一緒に行動してるからね。
原因を探るのも簡単ですよ。


さっきまで一緒に行動してた役員に、小さく何かを言われたことは知ってる。
そいつの顔が曇っていくのも、言ったジジイの顔が品位がない下種な笑顔だったのも見ていた。

きっといやなことを言われたんだろう。

自分の中で気にも留めていないことや、否定できることについてはあっけらかんとしているが、こと気にしていることについては、気にしすぎてさらに落ち込むのだ。

まあ、フツーの奴はみんなそうだけどな。

俺だって、やっちまった時は1人反省会をする。

改善したかはまー・・・置いといて。


落ち込んいるこいつの行動はわかりやすい。
誰かにかまってほしいとか、甘えたい気分になるらしく、ただ、それを表に出していいのか戸惑って、結局1人で悶々とするのだ。

その様を見てるのもまあ、悪くはないんだけどな。
悩めよ青少年(少年じゃないけど)なーんて気分になる。

でもまあ、今日は甘えさせてあげましょうかね。





俺のかわいい部下ちゃんの名前を呼ぶと、はっと驚いた顔をして、それでも不思議そうに「なんだ?」聞いてきた。

それに俺は、「こっちおいで」と言わんばかりに両腕を広げる。


「どーんと来なさい」


そう笑って言えば、部下ちゃんは目ん玉真ん丸にして、そして躊躇した。

こいつの怪力は前科もりもりだもんなー。
でも安心しろ。覚悟はできてる。

「いいから思いっきりおいで」

もう一回促して、はようやく俺へ体を投げ出した。


ダンプに軽く小突かれるって、こんな感じなんかな。
座ってるのに腰がやられた。

衝撃に耐えている間に、が俺の体に身を寄せる。
ぐり、と押し付けられた頭を撫でて、俺もやわらかくてかたい体に身を預けた。



結局は俺も、おんなじなんだよ。



たまっていた不満とかやるせなさとか、色々な鬱憤で気分が沈んでたら、ちょっとだけだけど人の温もりがほしくなるだろ?


そういうことなんだ。




だから
ちょっとだけ、
そばにいてね。