<っていう夢をみたんだ> ※注意※ 「ジャンのためなら世界を壊す」のネタばれが含まれます。 ポップコーンをつまんでいた指から、力が抜けた。 ゆるんだ指は今まさに口に含もうとしていたそれの軌道を誤らせ、大きく逸れて重力に従い腿の上に落ちる。 ああ、勿体ない。 のろのろとそれを摘まみ直して、3秒ルールで口に、今度こそ放り込んだ。 「これ、―――ひでえだろ」 「あ、ヤッパ、ソウ思う?」 さっきまで上映していた映画の、真っ暗になったスクリーンを指して呟くと、隣りにいたジャンが乾いた笑いを浮かべてそう返した。 「アレッサンドロ顧問って、才能ねえな」 さっきまでの映画は、アレッサンドロ顧問が、幹部とボスを無理矢理出演させて作成した映画だった。 話は支離滅裂で。ジャンが世界の裏側どころか宇宙にまで連れ去られて、それを幹部たちが大砲を使って自ら敵地に乗り込んで建物ぶっ壊してジャンを助けるとかいうもので。 しかも大砲を使い続けると地球がぶっ壊れるとか。どんだけの威力なんだっつの。 いや、人間がそんなに硬い訳が無い。地球がもろすぎる。 「つーかさぁ、これ、デイバンにいる奴しかネタ、ワカンネーし。そもそも男が男を助けに行くっつーのがなんか…ビミョーだし。 あ、でも大砲でドッカバッカぶっ壊してるシーンはスカッとした!」 率直な意見が聞きたいと言われたので、感じたままを喋る。 「攫われる場所可笑しいよな。どこのカートゥーンだっつの」 本なんて読まないし、学もないから大したものは言えないけど、それで問題ないらしく、ジャンは楽しそうに聞いていた。 「ははっ。マ、ありえないことだらけよね」 色々言い終ると、ジャンはまた笑う。 その後、じっとこっちを見て尋ねてきた。 「はさ、どうよ?」 「何が?」 「俺が世界のどっかに攫われたら・・・さ。どうする?」 「んなの。助けに行くに決まってんじゃん」 何言ってんだ。 うちのボスが攫われたら、地の果てだって探しに行って助けるよ。 当たり前だろ。と返すと、そっか。とちょっとジャンは笑みを深くした。 「でも大砲はつかわねーなぁ。自分で壊せるし」 地球滅亡も嫌だし。 自分がぶっ壊すなら、地球も滅びたりしないから安心安全だ。 そう言うと、ぶはっとジャンが噴き出して、「攫われた奴らが大変だわ」と声を上げて笑った。 「俺も攫われないようにしないとねー」 「その前に攫う奴らをぶっ潰すから平気だよ」 「そーね。頼りにしてるわン」 当たり前だろ。と言うと。 ありがとな。とお礼を言われて。 絶対守らないとな。と一人思った。 |