<とあるカポの誕生日>
ある日、今日も最悪で最高な仕事を始めるかと自室に入ると、なんだかすごいことになっていた。
「あ、ジャン! ボンジョルノ」
「ボンジョルノ、・・・・・・・どしたのコレ」
色とりどりの、ホームパーティ会場みたいな素朴で、だけど誰もが喜びそうなチョイスの食事が、テーブルに所狭しと置かれている。
さらには厨房から借りたのか、サービスワゴンまであって、その上には大きなケーキがどんと、乗っかっていた。
―――――――――ってえ・・・アレ? ケーキの真ん中に書かれてるのって・・・つまり・・・・
「誕生日、今年はパーティとか、しないんだろ?ささやか・・・・にしては張り切りすぎちまったけど・・・せっかくだからさっ」
もじもじと指を組んで回してと、は口早に、何かに焦りながらそう言った。
ああー、なんですか。なんか可愛いぞ。
「えーと・・・つまり・・・・うん、グラッツェ、って、言った方が、いいんだよな。
―――――――――これ、が手配したのか?」
「え、・・・チガウぞ?」
なんだか気恥ずかしいななんてこっちまで照れくさくなりながら聞くと、は目を瞬いて、否定した。
「んじゃあ、別の奴が?」
これにも首を振って否定される。
「オレ一人で考えたんだ。他の奴とか、呼んでねーし」
「んじゃ、これって」
「オレが作った」
なんでだろう。
目が点になりましたよ。
ここでイヴァンの馬鹿っ子がいたら、「テメエ料理なんて繊細なもんができたのかよ!」とか言いそうダナ〜とか思ったり。
「!? ウッソ!料理得意なの!?」
「う・・・まあな! 自炊してたから一通りできるぜ!」
しばらく間をおいてから純粋に驚くと、何かつまった顔になったは、そのすぐ後に開き直って得意げに体を反らした。
「ヘェーっ すげーな。 早速食おうぜ!」
部下の意外な才能を褒めて、そう言えば朝はまだ食べていない腹が、目の前の飯に反応する。
ソファに座ったところでが皿とフォークを差し出して、俺はまず綺麗に上げられたチキンを口に入れた。
「ン〜〜〜っ! ウメェ!! うめえよこれ!」
予想以上の味に、舌がとろける。
次なる美味を求めて、俺のフォークは大皿の島々を駆け巡った。
「へへ。よかった」
そんな俺を見て、の安心した声が隣りから聞こえた。
夢中になっている俺は見てなかったけども、その顔には心底嬉しそうな笑顔が浮かんでいた。
「でも、一人で食べきれないよなぁ。 よし、暇なヤツ呼ぶか〜」
できれば独り占めしたけども、こういうのをみんなで楽しむのも好きだ。
オレがそう提案すると、は「わかった」と頷いた。
そして、執務室から出ていこうとして、ふと、思い出したように俺へ振り返った。
「ジャン! 誕生日、おめでと!!」
けたたましく閉められた扉を見て瞬いて、ケーキをふっと見つめてしまった。
「最高のプレゼントだねえ。まったく」
大変おいしい食事に、サイッコウの部下。
大変に幸せ者の俺は、ソファーにもたれて次なる食事に舌包みを打った。
END
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