<メリークリスマス>
クリスマスへ向けて、CR:5の忙しさには拍車がかかっていた。
毎年のことだが、生誕祭、さらには年始に向けてのこの季節、その忙しさは猫の手を借りてもなお足りないほどの忙しさとなる。
当然ジャンたち役職付きには大きな仕事があり、さらにはデイバン中からのパーティや演会に出席しなければならず、クリスマス前日から年が明けてもしばらくはほぼ不眠不休の体力勝負になっていた。
「毎年思うが、年をとるたびにきつくなるな」
とぼやいたのは最年長であるベルナルドだ。
まだ40にも達していないというのに既に年寄りじみたセリフを吐く彼の顔には、明らかなやつれが浮かび上がり、瞼の隈もくっきりと浮かんでいる。ひょっとしたら頭髪を隅々探したら、白髪や脱毛などが見つかるかもしれないと、幹部とカポ、そしてその部下の中の誰かが思った。
「なに言ってんだよ。まだまだこれからだっての」
それぞれが大なり小なり疲労を浮かべている中、一人元気に幹部たち全員を労っているのは、だ。
むしろ楽しそうにしている姿は、ジャンにくっついて同じように不眠不休に働いているはずなのに微塵も感じさせなかった。
こいつの体力は化け物か。と、ルキーノ辺りが唸るように毒付いている。
「あーでも明日、ホント楽しみだなー!」
「明日?・・・なんか面白いスケジュールあったっけ??」
全員にカップと軽食を配り終えたは、そんなことを言ってソワソワしている。
疲れている状態でテンションは低いが、ジャンは楽しそうに待ちわびているの反応に、詰めに詰め込まれたスケジュールを頭の中で反芻しようとしてできず、ベルナルドに目線を寄こすが反応は芳しくなかった。
「だって明日はクリスマスだろ!サンタがプレゼントをツリーの下にある箱に入れてくれるんだろ!」
静寂がその空間を包んだのは、言うまでもないだろう。
「そこまで阿呆だとは思わなかった」
ジュリオが絶対零度の瞳で呟いた。
それは馬鹿を見るのもおっくうだと真正面を向いており、を見てすらいない。
もはや疲れて何も言う気がないのか、呆れ過ぎて何も言えないのか、他の幹部たちは物も言わず重たい空気に包まれている。
「え、なんだよ。楽しみだろ?」
キョトンとしているのはだけだ。
疑いを一切していない純粋な子供の瞳だった。ジャンは頭が痛くなった。
それと同時に、こいつほんっとあほの子なんだなーと、やや癒されるような、ほっこりした気分になったが、疲れたせいでまともな判断ができなくなってるんだと思った。
でっかい大人が未だにサンタがいると信じているなんて、どんなふうに育てばそうなるんだろうか。
それともそれほど過保護にしていた人間がいたということなんだろうか。
未だにの過去はよくわからない。
暴れたいだけ暴れて荒れた生活をしていただろうに、何がどうしてそうなった?
「なんだよ・・・どうしたんだ?」
「いや・・・・・うん・・・・・・ソウダネ。サンタサン来ルトイイネー」
絞るようにそう呟いたジャンに、はにこにこと嬉しそうだ。
んがっと、イヴァンのいびきが聞こえてきて、俺も夢の中に言って童心に帰りたいな。と、ジャンは意識を遠くへと飛ばした。
そして、未だにサンタの幻想を抱いている可愛そうな子のために、後でささやかなサンタへのプレゼントの手配をさせるか、現実を教えてやるか、ほんの少しだけ考えた。
END
|