<ルームメイト> 仕官学校の朝は早い。訓練開始の基本時間は9時からだが、抜き打ちでその3時間早く起こされることもある。 「話には聞いてたけど、本当にあるんだな」 しかも初日から・・・とぼやいているのはシンの向かいに座っただった。 シンのルームメイトであり、同じパイロット科。この学校に入ってから、一番多く顔を合わせて、一番多く同じ場所にいる人間だ。 昔ならばともかく、シンにとってこの少年は今は苦手で、なるべく関わりたくないのだが、他に知り合いのいない状況なので、どうしようもない。 の独り言を耳に通して、朝食を食べ終えたシンは席を立った。 もそれにならって立ち上がり、シンを追いかける。 「おーい。少しは親交を深めようとか思わないのかよ」 隣に立ち様に言われて、シンは隣りを見た。 目が合うと笑う。その笑顔がいちいち癇に障る。 「お前と仲良くする気なんてない」 「そうは言うけど、科も同じで、部屋も一緒なんだからさ。俺としては・・・・」 「だったら」 平和に生きてきた人間。 自分の周りで、何が起きていたのかを知らないで生きてきた人間。 そんな奴が、自分の近くにいることが、たまらなく許せない。 「俺の言うこと何でも聞くか?そうすれば仲良くしてやってもいい」 遠ざけるためだったら、言ったこともない、傷つける言葉を言ってもいい。 衝動のままに、冷笑を帯びてシンは言い放った。 怒るか離れていくかと予想し、はきょとんと眼を丸めて、次には難しい顔になった。 「悪いけどそれは嫌だな」 遠ざかる選択を選んだかと、シンは内心で鼻を鳴らした。 しかし、すぐに目を丸くすることになった。 「だって、友達になりたいんだから」 照れくさそうにそう言って笑うに、シンは茫然とした。 予測していなかったそれに、シンは戸惑い、足を速めた。 「待てよ」と声が上がるが、さらに速度を上げて振り切る。 あんな奴と、友達になれるわけがない。 そればかり頭を占めていた。 |