姉妹風景





「お姉ちゃん」
「どうしたの。メイリン」

学校の休息日に、久しぶりにショッピングでも楽しもうと私は妹と二人で街に出ていた。
訓練、訓練の毎日で、あの学校には潤いってものがまったくないのよね。
そりゃあ長く暮していれば、寮も実家みたいに感じるし、友達ともいつも以上に親身になって落ち着くけど。
世の中から刺激が無くなったら人生つまらないもの。

午前の物色巡りで、休憩がてらご飯を食べていたときだった。
やけに神妙な顔をして自分を呼ぶ妹に、私は首を傾げた。

「あのね・・・聞きたいんだけど・・・・」

と、打ち明けようとして、メイリンは俯いた。
ああ。またこの子の悪いところが始まった。
メイリンは自分に自信がないのか、内向的だ。そのせいで何か言いたいことがあっても黙り込んで俯いてしまう。
ちゃんと可愛いし、笑顔を見せれば男の子だって振り向かない訳ないのに。どうしてこうなっちゃたのかしらね?
妹がもじもじしている間に、自信をつけさせるにはどうしたらいいかと頬杖を付く。
しばらくしてメイリンは真っ赤になった顔を上に上げ、身を乗り出してきた。

「あの人と、どういう関係なの!?」

「・・・・は?」

一体誰のことかと目を瞬いた。
「お姉ちゃんとよく一緒にいる人!・ヤマトさん!」と、名前を出され、その名前に驚く。
ええ?なんであいつの名前が出てくるわけ?

その名前は、シンとつるんでるルームメイトだった。
よく目につく二人だから自然と目がいって、なんとなくよく一緒にはいるけど。正直、好きかと聞かれたら謎なのよ。
シンは危なっかしい感じがして気になってるけど、はどっちかっていうと反発したくなるタイプ。
結構周りでは眉目秀麗のレイと並びに出されるけど、私にはわからない。
確かにかっこいい部類には入るんだろうけど・・・そんなの他にだっているじゃない。
それにあの、なんでも受け入れますって感じの雰囲気が気に入らないのよね。
包容力のある男っていいっていうけど、あれは八方美人っていうのよ。
誰にでも笑顔を振り撒くところが胡散臭いわ。
善人ぶってる所も嫌。嫌み言っても流されて、笑顔で濁されて。あれって絶対私たちのこと下に見てるのよ。
同い年のくせに大人ぶって。なんなのかしら。

妹の問いに嫌々答えると、メイリンはあからさまにほっとした顔になった。

「ねぇ、なんであいつなの?」

この子がどんな人を好きになろうが、幸せであれば構わないけど、相手だけに尋ねてしまった。
メイリンは何かを思い出したのか、ぽっと顔を赤らめ手をいじる。

「前にね・・・教官に荷物を頼まれて大変だった時に、手伝ってくれたの」

ああ・・・・そんな。なんて王道パターンに弱い子なの。
そんなの吊り橋現象と一緒じゃない。

「そ、それにね、笑うとなんだか可愛く見えるところもね良くって・・・お姉ちゃん知ってると思うけどすごく友達想いなんだよ」

私の反応に、あいつの良さを一生懸命語ってくる。
ごめんねメイリン。一緒にいる時間が長いから説明されなくても分かってるわ。

それにしても、まさか私の妹にまで毒蛾を伸ばしていたなんて・・・なんて奴。

顔を真っ赤にして好きな人のことを伝えるメイリン。
その好きな奴がまさかのあいつ。
この恋を応援してもいいのかしら?

「お姉ちゃん、あの人紹介してくれる?」
「紹介・・・ねえ・・・」

妹の恋と、自分の感情を天秤にかけてみる。
可愛い可愛い、ちょっと憎い私の妹。

「ま、いいわよ」
「本当!?」

あーあ、お花飛ばして笑っちゃって・・・
こういう笑顔、私にはできないわ。

ま、妹想いな姉に、なってあげますか。











感性が真逆な姉妹