<夢でもいっしょ>--------シン編 「シン?」 声がする。 「シン、起きて」 聞き慣れた声だ。 ああ。 これはルームメイトで、友達の。 あいつ――の声だ。 答えを導き出した俺の意識は目を覚まさせて。 「ん、ん…ん?!」 「おはよう。シン」 目の前の事態に、混乱状態になった。 なんで、なんでこいつは。 おさげのかつらをかぶっているんだ? なんでこいつは、妹のマユの格好をしているんだ!?? 「お、おま。なんだよその格好!」 「昨日シンがおねだりしたんじゃないか。妹コス」 似合う?と首をかしげておさげが揺れるの姿は……いや。いやいや!やっぱない!! 「ちょっとまて!誰もそんなの頼んでな」 「俺…弟で、シンと同い年だけど…頑張ってお兄ちゃんっvvて呼ぶから」 俺の抗議も無視して、は妙なシナを作って言ってくる。 「…やめろ。頼むからやめろ」 頭が変な風に湧いてくる。っていうか。頭痛がしてきた。 「お兄たまのほうがいい?それともにーに?」 「そういう問題じゃない!頼むからその格好もやめてくれ。………居たたまれない」 なんでよりによっての女装……しかもマユの服きた姿なんか見なきゃならないんだ。 「そうか。頑張って選んだんだけど…」なんて言ってしょんぼりしているは、絶対に頭がおかしい。いや夢だからおかしいのもしょうがないんだけど。っていうか、俺の中のこいつって、こんななのか!? 「じゃあ…王道で」 しぶしぶ着替えようと服を抜いていくは、さらに目を剥く姿になった。 「だからそういう格好をやめろって!てかなんで裸エプロン?!」 気持ち悪い!! すごく見たくなかった!! 「? 新妻萌の王道だろ? 彼女ならシンのシャツだけど、俺が着てもワンピースにならないし」 「そんなこと聞いてないだろっ」 「わあっ!」 爆発した俺は、ちゃぶ台をひっくり返した。 夢だからか、ご丁寧にご飯の支度がしてあった。そのすべてが目の前の目を逸らしたい友人の周りに散らばる。 しくしく泣くな!悲しそうに片づけるな!! 「シン…俺のこと、キライ?」 「やーめーろー! なんか変な気分になる〜」 何なんだこの状況は!!! 俺が悪いんじゃないぞ! 絶対違う!! 内心罪悪感に駆られて、なにかまずい行動をしてしまいそうなのも絶対気のせいだ! 俺は慰めたいとか思ってないっ!! 早く目を覚ましてくれ俺っ! 「俺、シンのこと大好きだから。喜ぶこと何でもしたいんだ…」 「じゃあ今すぐ!普通の格好してくれ!頼むからっ」 目に涙を溜めて、それでもふわりとほほ笑んでくるそいつに、俺は懇願した。 「普通? …シン、制服萌?」 「全部そこに持っていくな!」 俺は変態じゃない!! というか、なんでそんな発想ばっかりなんだよ! 「わかった…じゃあ、俺のこと好きって言ってくれたら着替える」 「はぁ!?」 なんでそうなるんだ!? 「ね、シン。俺のこと好き?」 上目で見上げてくるに、俺は身体を引いた。 遠のくと少し哀しそうに眉をハの時にされる。一瞬気持ちが苦しくなってしまった。 (なんだこれ…こいつのことは友達だと思ってるけど、この場合に言うとニュアンスが違いすぎるだろ) もしここで言ってしまったら、俺は世間一般で言う「ホモ」になるんじゃないのか!? 「ね、シン?」 「絡み付くな、すがりつくなぁ!」 だが、選択の余地はないようだった。 「わかった!言う!言えばいいんだろっ」 「おーいシン。シン?しっかり…」 目の前の顔を引きよせて、俺はその耳もとへ呟いた。 「…好きだ」 どうだ。これで役目は果たしたぞ。早くそのきつい格好をやめろ。 そう思って見上げると、きょと。と目を丸くしている、がいた。 「…」 「…」 なんだ?あれ? なんか、さっきと違…… 「えと、寝呆けてる?」 「う、うわ!」 首を傾げて苦笑いされて、俺は自分が目を覚ましていたことに気がついた。 あわてて首に回していた腕を外し、飛び起きて壁に身体を押しつける。 そんな俺の反応に、は声をたてて笑ってくる。 うううくそ!!なんで! 「なんだ?女の子に告白する夢見てたのか?」 「っち…あ…ああああっ!」 恥ずかしさとか、悔しさとか、後悔とか、なんというか。 もう俺の頭めちゃくちゃだ!! 発狂しても、この羞恥は収まりそうにない。 「どうどう」 「ううう…」 頭を抱えてうずくまる俺の背中を叩かれても、叩いてる本人と自分のせいで収まらない。 よりによって!よりによって!なんでこいつなんだ! 居た堪れない。 ほんと。ありえない! 「シンに好きな子がいるなんて知らなかったな〜だれ?俺知ってる子?」 「うるせぇぇぇっ! 聞くな! 頼むから!」 にこにこ(にやにや?)笑って揶揄うそいつへ、俺はこの上ない屈辱でいっぱいだった。 なんて最悪な朝なんだ!! |