夢でもいっしょ>--------ルナ編




これは夢ね。絶対夢。



確信した答えが私の頭を満たす。

ここには現実感なんてない。
周りの景色は何かの形は取っているけれどおぼろげで、暗い。

そして私自身の感覚もふわふわしていた。


そんな夢の中の私は、花畑で座り込んでいる。
別に何をしてる訳でもない。ただ俯いているだけ。


「ルナ」


真上から声がして、私は見上げた。

そして、絶句。


「ルナ、何を泣いているんだい?」

私を見下ろしているのはだった。
そこそこ整っている顔を心配気に歪めて、のぞきこんでくる。

「は?」

間の抜けた声が自分から漏れた。
こういうシチュエーションで、声をかけてくれるのは定番で言えば「素敵な王子様」。
別に乙女指向なんてないけれど、私だって女の子だからそんな状況があったら一度は体験してみたい。

それなのに。
なんでがいるの?

なんでよりによって、なの?

「かわいいルナ。涙をおふき」

は背後にキラキラした花を背負って、満面の慈愛の笑みを私に向けてくる。
一瞬見惚れ・・・じゃない。茫然とした私は、が私の手を取ったのにも気付くのが遅れた。

「ちょ、。何してんのよ」
「ああ僕の愛しいルナ。君にそんな顔は似合わない」

私の講義にも反応なしに、は屈んで目線を同じにして、まだ背負っている色とりどりの花をものともせず、柔和に微笑んでいる。

そして、私の頬に手を添えてきた。

「気持ち悪いんですけど」

思わず言ってしまった。
ベタ惚れしてる妹のメイリンだったらともかく、別に私はこいつに・・・まあ友情?・・以上の物は持ち合わせてない。
それにいつもの雰囲気と離れ過ぎていて、本気で気持ち悪かった。

「さあルナ、笑って」

気持ち悪いのに、この夢は終わらない。
はいつまでも私に笑えと言う。

「は、はは」

浮かんだ笑顔は、かなり引きつっていた。







「は…」

目を覚まして、起きたのを自覚したのは瞬きを3回ほどした後だった。


なんて疲れる夢を…


なんでこんな夢も見なければならないんだろう。
あれかしら?メイリンの恋愛相談にのってるせいかしら?
自分の願望だとしたら寒いわ・・・

「あら、起きたの」
「おはようリイナ」

ルームメイトへ挨拶すると、「残念」と言われた。

「もう一回面白い顔みたかったのに」
「はあ?」

面白そうに揶揄うリイナに、私は何の事かと眉を寄せる。

「寝てるときの貴方、すごい幸せに笑ってたわよ?」

言われて、固まってしまった。

嘘よ。だってあいつの夢よ?
なんでそんな顔しなきゃいけないのよ。

むしろ嘆く所だったんだから!!



「―――っしあわせじゃないわよ!」



私の心からの叫びは、ルームメイトの揶揄いに一蹴された。













いやもいやよも・・・?
ルナはツンデレだと信じて疑わない自分。