<夢で・・・・>――――レイ編 望まれて生まれなかった。 可能性があるから。それだけのために生まれた。 生み出された。 あの人を恨んだことはない。 だけど、敬ったこともない。 自分は彼で、彼は自分だった。 未来の自分の姿なのだと思った。 自分にとって何より大切な人は。 「レイ」 自分へ手を差し伸べてくれたこの人。 濃い紫の髪、暖かい土色の瞳。 短く揃えられた髪の青年に、意識は間違いを認めた。 ――――――ギルじゃない。 夢のなかで、ギルとヤマトが置き換えられている。 分かっていても少年の自分はヤマトの手を取り、心底嬉しそうに微笑んだ。 全身を明け渡してヤマトに縋る自分。 少しだけ歪む顔は、不安のせいだ。 あの頃の自分は、己が生きていることに対して抵抗を感じていた。 生まれた意味すらないのに、生きている資格があるのかと。 その度にギルは、意味なら私が与えようと言ってくれた。 生きる理由を与えてくれたあの人は、自分の支えだ。 まかり間違えても、こいつにはなりえない。 「馬鹿だな」 夢のなかのヤマトは穏やかに微笑み、小さな自分の髪を撫でた。 「誰も意味を持って生まれたことなんかない。みんなわからないまま必死に生きて、気付く人なんて本当に少ない。 そんなことは、生きる資格にならないんだよ」 ギルの言葉とかけ離れた答えだった。 それなのに、ギルと同じくらい――――――鼓動が跳ねた。 「もし、資格が欲しいのなら、レイが今ここにいることが資格だよ。生きて俺といる。いろんな人と触れ合う。それだけでいいんだ」 穏やかに笑み、意味を考える必要などないのだと言うヤマトに抱かれて、幼い自分の不安がかき消された。 二人を取り込む何もかもを包み抱く空気。 感じたことがない。 こんな気持ちは。 これは一体何だ。 わからないまま、ただ涙が流れた。 夢は得てして覚えることができない。 それでもわずかに覚えていることはある。 今日この顔が不愉快なのも、そういうこと。 「レイ、なんか今日、やけに俺のこと睨んでない?」 自分の支えが変わることはない。 彼に変わるなどありえない。 「えと、何かよう?」 「俺はお前を認めない」 どんなことが起こっても。お前がお前であるかぎり。 「なに、あれ」 「俺、いつまで否定され続けるんだろ」 「レイって天の邪鬼なのね」 目の中に入っているから、否定の言葉を吐かずにいられない。 |