<メリクリ>
その日のキラは、俺と顔をあわせるなり、ほとほとと涙を流しだした。
「おい・・・・なんで泣いてんだよ」
「だって、が目の前にいるのが夢のようで。さらにトナカイコスとかっ・・―――何のご褒美?」
「そういうお前もサンタの格好してんだからな」
クリスマス当日、みんなで集まってパーティーでもしようということになっていた。
アスハの別荘を借りて、飾り付け・セッティング係になっていた俺は、買い出しケーキ係のキラを出迎えて、相変わらずすぎる兄の姿にため息の一つも吐きたくなった。
「管理人は絶対何か企んでるんだ。でなきゃあんなに近くにいた僕らを引き合わせないなんて言う鬼畜所行ができるわけがない。
裏があるに決まってる。きっとまた来年も本編で再開できないんだ。でもありがとうグッジョブ」
「頭大丈夫か」
「僕はいつでも狂いが通常装備だよ。忘れたの」
「一生忘れていたい事柄だった。思い出させてくれてありがとう馬鹿野郎」
奇行から一変して真面目に真剣にそう言いきったキラへ、見下した冷たい視線を送ってやる。
そんなことはもう日常茶飯事なのでキラには全く効果はない。
「はあぁ。この後アスラン達が来るのかと思うと気が重い」
「なんでだよ」
「が独り占めできない。辛い」
そんな落胆するほどのことか。
キラは一度大きくため息をついて、子供がいいことを閃いたような明るい笑顔を浮かべた。
「赤鼻のトナカイさん。サンタと空中散歩しない?」
「どうやって?」
「フリーダムで」
「寒いから却下」
「外に出すわけないよ。の特等席という名の僕の膝のうe」
「ふっ!」
どすっ
「、テーブルクロスが足りないんだけど・・・って、・・・なにしてんだ?」
「いいところに来たシン。ケーキを頼む」
「はあ・・・」
首を突いて昏倒させたキラを担ぐ。
俺と同じくセッティング係のトナカイの着ぐるみを着たシンが玄関に来てくれたので、キラが持ってきたケーキ箱をシンに頼んだ。
キラを別室に放置してから飾りつけを終えた頃、食べ物調達係のカガリとアスランが揃ってやってきて、プレゼント係のルナたちが最後に加わり、キラを叩き起こしてパーティーが始まった。
「メリークリスマス!」と全員でグラスをならして、和気あいあいと各々楽しんでいる。
ちなみに服装は、俺とシンとレイがトナカイ。メイリンとルナとラクスが魔女。キラとカガリとアスランがサンタだ。
やるのなら徹底的に!と女子組の強い押しによってできたものだった。
後々写真を撮らされまくったので、若干陰謀めいたものを感じるけれど、男は女に弱い。意見はしないようにしている。
「はーいそれじゃあプレゼント交換をしたいと思いまーす!」
ホーク姉妹の号令に振り向くと、クジ箱を持ったメイリンが全員へ引くように促して、ルナの場所にプレゼントを取りにいった。
プレゼントの内容は、全員がリクエストしたものだ。
ただし自分の希望にあったものが当たるかは運しだいにしたのは、その方が楽しいだろうと、やはり女子の意見だった。
内容によってはトレードも可能なので、後で不満に思う人間もいないだろうという配慮があった。
全員が受け取り、一斉に包装を解いていく。
女子組は各々、望み通りだったりそうじゃなくても気に入ったものだったらしい。
男連中はアスランとレイがお互いに物を交換し合っていた。
そして、俺の手元にはシンが希望していた好みの作家の著書がやってきた。
「あ!いいな」
シンが羨ましそうな声をあげる。
そして自分の分を開け終わって――――
「なんだ、これ―――」
シンが箱を開けて絶句していた。
それを見てにやにやと女子組が、主にルナが笑っている。
そしてキラが悔しがっている。
嫌な予感を感じて、俺はシンの手元を覗き見た。
シンの箱の中には、やけに可愛らしいチケットが一つ。
そのチケットには。
『とのキス券』
ばっとキラを睨みつけると、あわてて目を反らされた。
次にニヤニヤ笑っているルナを睨みつけると、しらを切ったような顔をされた。
「ルナマリア。メンツが嫌がるようなプレゼントはなしだって、言ったよな?」
「なに言ってるのよ。あたしたちとキスするのが嫌だっていうの!?」
逆切れされて、まあ女の子とするのはやぶさかではないと思うけども・・・と思いつつ、当たると嫌過ぎる人物がいることも間違いない。
デコとキスなど・・・・・想像しただけで舌を噛み切りたくなる。
だが今俺が意見したところで女子の強制力がどうにかなるとは思えなかった。
――――しかたない。シンには悪いが。
「シン、ごめん。この本シンに譲るから」
「え」
分かっていないシンの肩を掴んで、唇をあてる。
「あーーーーーーーーーーー!!」と「きゃーーーーーーーー!!」とぱしゃぱしゃという音がなったが、すぐ離したのでたぶん撮られていることはないだろう。と、思いたい。
固まったシンに同情しつつ離れて、キラをぶん殴る。
うむ。後でキラに俺のプレゼントを要求しよう。それでチャラにしてやる。
ふふふふと、なにか嫌な笑い声が聞こえて振り向くと、カメラを持ったルナの周りに女子たちが集まっていた。
みんな色んな色んな反応をしているが、明らかに楽しんでいるのは確かだ。
俺はルナのカメラを奪い取り、問題の画像を素早く消した。
「あーーーーーーーーーーーー!!!」
「肖像権の侵害だ」
投げ渡して二度としないように釘を刺す。
はあ。とため息をつくと、同情するようにレイが肩をたたき、固まったままのシンを介抱しにいった。
年末もいつもの調子。
来年もこうなんだろうなと思ったら、とても気が重いけれど。
まあ、そんなこいつらが結局好きなんだよな。と思えば、苦労してやろうかと思った。
END
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