<トリィ>





ボクの持ち主のキラはちょっとおっちょこちょい。
ボクのことで喜んでくれるのは嬉しいけど、水に入ったのはびっくりしたな。

「トリィが死んじゃった〜」

わんわん泣くキラ。

大丈夫だよ。ちょっとショートしただけ。
でもこのままだとホントに回路が壊れちゃうかも。

「んな訳ないだろ。早く修理しないと直るもんも直らなくなるぞ」

ボクの気持ちを汲み取ったのか、キラの隣にいるが促す。

この子はときどき、ボクを見る時むっと眉間に皺を寄せる。
嫌われてるのかなと思うけど、ちょっと違う気もする。

だって、直してくれてる時の手が、とっても丁寧だもの。
ボクが嫌いなら、こんな手にはならないよね。

「直った!よかった〜っ直ったあ!」
「おいおいあんま乱暴に扱うなよ。また壊すぞ」

また動き出した僕を見て、キラが喜ぶ。
胴上げするみたいにボクを投げるのがちょっと嫌で、ボクは飛んで避難した。

「あ」
「んん?」

着地したところはの頭の上。
キラがボクを見上げてくる。そしてくすりと笑った。

「くそう・・・なんで俺の頭に乗るんだよ」

ぶつぶつ文句を言う声が下から聞こえるけど、頭は動かない。
ボクが居心地いいようにジッとしてくれている。

「お気に入りになったのかな?」

「トリィ」

うん。大好きだよ。
二人とも、ボクの大好きな子。











トリィ水難事件。