<おれときらとらくすさんと> 久しぶりの休日だった。 いつも何かにつけててんやわんやと仕事に追われていた俺にとっては、ようやくできた休日だ。 久しぶりの休日は何をすることも勿体無いような、何かしなければいけないような、浮き足立つ感じで。 家で怠惰に暮らすのも良いし、街にくりだして歩き回るのも良い。遠出してレジャーなんかも良いかもしれない。 なんにしても楽しまなきゃ損というものだ。 「見て見て!!こっちに面白いものがあるよ」 「、あちらのショッピングモールへ行ってみませんこと?」 なのになんでこんなことになっているんだろうか・・・・ 「・・・・・・・あー・・・と・・・・お二人さん・・・ちょっと聞いてもいいか?」 「なぁに(なんでしょう)?」 「なんでここにいるんでしょうか・・」 「お休みだからだよ(ですわ)。君(貴方)が」 「・・・・・・は・・・ぁ・・・」 なんか、突っ込みどころが多すぎてあえて突っ込むのが嫌になったから流したけど。 どうやったってこれは確信犯で、俺への嫌がらせから見るなら愉快犯だ。 しかもどうやったって問題にされるのは俺になるんだよ。 だって世界的に有名な二人なんだぞ!? どう考えたって一般人の俺が一緒にいられるもんじゃないだろ!! ・・・いや、別にキラは良いんだ。キラはな。 戸籍上兄弟だからな。家族団らんと思えばな。 でも・・・・・なんでラクスさんがここにいるんだよ・・・っ 俺と関連なんて・・・ほとんどないだろ? 本人たちは何も言ってないけど、この二人が恋人同士だという噂は良く聞くし。キラとデートとかだったら泣くな。イチャラブっぷりを見せ付けられていい迷惑。むしろ邪魔しないからどっかいって欲しい。 「、どうかなさいましたか?」 「!」 遠い目をしていた俺の手を、両手で包んで寄り添ってくるラクスさんに驚いて、俺はつい身構えた。 凝視するとラクスさんはさして気にもとめず、むしろにこやかに笑った。 その笑顔はラクス・クラインの象徴イメージである、誰もが安心し、身を委ねる聖母のような笑顔ではなく、花のように可憐な少女の笑顔で。 つい、顔が赤くなってしまった。 「ちょっと」 なんだかむず痒いような心地良いような雰囲気が流れた俺とラクスさんの間に、不機嫌なキラが割り込んだ。 丁寧につないでいた手を離して。 「ちょ、おいキラ」 そして離した俺の手を取って、自分の胸へと抱き寄せてくる。 力が強くて息がしづらい。 「ラクス?誰がこの子にモーションかけて良いって言った?いくら君でも許さないよ」 「あらキラ?恋愛は自由ですわ。私が誰を好きになっても、が誰を好きになっても、キラには関係のないことでしょう?」 「いい度胸だね」 「そのままお返しいたしますわ。はやくを放してくださいな」 「嫌だよ。それには僕の。生まれた時から決まってたんだから」 「あら?どなたが決められたのでしょうか?傲慢も甚だしいですわね」 ・・・・・ブラックだ。 ブラックな空気が辺りを充満している。 二人ともゾッとするほど満面の笑顔で、容姿も整ってるからさらに恐ろしい。 俺も周囲の、こちらをあえて避けている人たちの中に入って、避難したい。 この二人が地位的にも武力的にも誰にも叶わないことが良く分かっているからさらに。 「も、このような弟馬鹿と一緒にいたくはないですわよね?」 「馬鹿?馬鹿って言った?はっ君はどうなんだよ。知ってるんだぞ。自分の護衛に自分基準のいい男をいつもつれてることは。そんな人にこの子は渡さないね。何があるか分かったもんじゃない」 「ご安心くださいな。貴方を誘うことはありませんから」 「ありがたくて涙が出るね。こっちから願い下げるけどね」 「うふふふ」 「あははは」 誰か助けてくれ。 いつの間にか俺を間に挟んで急接近してる二人。 言葉の剣で切り合いながら俺へと密着することは忘れない。セクハラだ。 ・・・・・・・・・・・・・・なんていうか・・・俺はおもちゃか。 人間的に尊敬できない二人に挟まれたまま、俺は溜息を吐いた。 「なあ。もういいからさ。買い物するなら早くしようぜ」 とにかくこの場を終わらせたい一心で、俺はそう切り出した。 二人は俺を見て、嫌そうにお互いを見る。 「仲良くしないんなら今すぐ本部に連絡して迎えに来てもらう」 「・・・わかった」 「仕方ありませんわね」 だから最終カードを開いて、二人を治めた。 そして俺は、右にラクスさんを、左にキラを引っ付けて、街を練り歩いた。 その夜の俺は、通常の仕事をしていた時より疲れていたのは言うまでもない。 |