<たなばた> 7月7日、七夕の日。 町内会の七夕祭りにヤマト家も参加していた。 キラは小さな弟と一緒に短冊に願い事を書くため、備え付けのテーブルで何をお願いしようかと考える。 その横で、は一心不乱に最近マスターしたひらがなで、短冊にはみ出ないように書いていた。 (何かいてるのかな?) ふと、キラは気になっての短冊を覗き込んだ。 『おとーさんと おかーさんと きらが わらって いますように』 つたない字のそれを見て、キラの背にぶわ、と感覚が走った。 「なんてイイ子なんだーーーーー!!」 そして衝動のまま、キラは愛する弟に抱きつき頬擦りをした。 「キラいたい」と嫌がるをお構いなしに、赤くなるまで頬を摺り寄せる。 周囲の父兄達の反応は、その姿を見て微笑ましいと和むか、少し怖いと引き気味になるかのどちらかだった。 しか見えていないキラにはどうでもいいことだったが。 「じゃあ僕は君のことをお願いするね!」 抱擁に満足したキラは、自分の短冊を手にとって願い事を書き出した。 その隣で、やっと解放されたは、赤くなってヒリヒリする頬をさすりながら、もう一枚短冊を引き寄せた。 一人一枚という約束だけど、これは切実な願いだから仕方がない。 ぐきぐきと鉛筆で書いた願い事の内容は、 『きらの へんたいが なくなりますように』 「でーきた!!吊るしに行こうっ」 に将来の心配をされているとは露知らず、兄はの手を取って飾りつけられた竹へと向かう。 「願い事、叶うといいね!」 大人の人にさっきの短冊を高いところにつけてもらうのを頼んだが、しみじみと頷いた理由を、おそらくキラが知ることはないだろう。 |