SEEDIF子供編1




おもちゃを分解したりするのが、昔からのくせだった。



特に機械はほとんど分解して、パーツを並べては親に怒られて元通りに直したりした。

兄貴は構造よりプログラムの方に興味を示してたけど、おれは細かいパーツをひとつひとつ組み立てて形が作られていくのが楽しくてしょうがない。




だから、専攻がそうなるのも自然の流れだ。










「君の作ったロボットはすごいなあ、アスラン君を思い出すよ」

自由課題のロボットをしげしげと見つめて言った先生の言葉。それを聞いて俺は眉間に皺を寄せた。


またか。
またあの野郎を引き合いに出された。


兄貴と同い年で幼馴染のアスラン・ザラ。

兄貴とよく一緒にいるということは、俺とも付き合いが長いということで。
あいつの優秀さぶりはよく目に入り、非常に不愉快になる。

兄貴も上位ランクに入るくらいの頭だけど、なんか嫌味が無いんだよな。

それとは逆に、あいつはものすごくむかつく。
ひたすらむかつく。気取ってないってそぶりもむかつく。何もかもがむかつく。
生え際うっすらヤバイデコっぱちのくせに。


しかも同じ分野が得意とあって、まさに眼の上のタンコブ。一言で言うならウザイ。

いっそまだ、さすがキラ・ヤマトの弟と称されたほうがいい。
よく言われるのはキラ・ヤマトの弟なのに・・・だけど。
あんま得意とは言えないもんなあ。プログラミング。
なんであんな数字と記号の羅列が物体を動かすのかが分からない。






「なーんでよりによって同じ分野なんだよ」

教員室を後にして、課題物のロボット片手に俺はブチブチと文句を垂れた。


まあ、いつものことだ。
文句を言いながら歩く俺も、あいつに対する憎さが増すのも。


いつも引き合いに出されるんだから、別ジャンルで提出すればいいんだろうが、あいにくと俺の頭はそこまで器用じゃない。それに物作りすきなんだよな〜。結局。

あいつと同じ趣味というのもムカつく要因だが。


「あ!」


ぎりぎり歯軋りして廊下を歩いていると、上から声が落ちてきた。

そして俺の顔はぱっと明るくなり、一気にどん底に突き落とされる。

階段から降りてきたのは兄貴と名前も言うのも嫌なあいつだった。名称デコっぱちにしておくか。うん。

「なんだ兄貴?なんか用か?」
「ううん。姿が見えたから」

えへへ。と兄貴が笑って言う。
ものすごく可愛らしく。
あ、若い女の先生が顔赤くして走って逃げた。
これがもし姉や妹だったらどんなにいいだろうかと思う。
そしたらもう恐ろしいシスコンになって、寄る男全て片付けていってんだろうな。まあブラコンだけど。

「別に家で会ってんだからいちいち声かけなくたっていいだろ」
「だって学校だと階がちがうから全然会えないじゃない!」
「あー・・・はいーはい。そうですね〜」
「もう!いっつもまじめに取ってくれないんだから」

兄が言うようなセリフじゃないセリフにどう突っ込めというんだこの人は。
熟年カップルのようなやりとりだと思うんだ。ほんと。
えーと、つまり兄貴が彼女役?それはそれで勘弁して欲しい。

「あ。それこの間作ってたもの?」
「あ、うん」

そう言って兄貴に渡す。
人型の外枠の無いそれは、キラを認識して挨拶するように手を上げた。

「へえ…ずいぶんディティールに凝ってるな」

せっかく意識的に視界の外にやっていたデコっぱちが覗いてくる。





うざ。





「最近は伝達系をどうやってスマートかつ、緩やかにするか研究してるんだよね」
「お前の年でこれだけできればすごいよ」
「いたんですかザラ先輩」

つい色々耐えられなくなってけんかを売る俺。
自分の目がすわって、嫌味な笑顔を浮かべているのがよくわかる。
デコっぱちが硬直した。

「もう何言ってるの。アスランがいること最初から知ってたでしょ?
 あからさまに嫌そうな顔してたの僕みてたんだから」

キラの止めに、デコっぱちはよろめいた。
無垢のなせる技だな今のは。

何とか持ち直したのか、デコっぱちはまだダメージの残った顔で俺を見る。

「…なんでお前はそんなに俺のことを嫌うんだ?」
「何をおっしゃっているんですか?自意識過剰ですよ先輩」

嫌ってんじゃなくって存在を認めたくないんだよ。
と、心の中で言う。

おくびに出さずに。

「そうだよ。嫌っていたらアスランと同じ科目にするわけ無いじゃないじゃないか」

それは大間違いだな兄貴。
たまたま偶然だ。

「ちょっとした愛情の裏返しなんだよ。許してあげて」
「……あ…ああ」

兄貴に諭されて、デコっぱちは鞘を収めた。

ちっ、デレデレしやがって。

「じゃあ、俺もう行くな」
「あ、!僕の頼んだものも忘れないでね」
「おう」

きっちり兄貴にだけ笑って、俺はその場を後にした。

















「やっぱり嫌われてるよな…」













なにか聞こえた気がしたが俺は即効で忘れた。