「さあ帽子屋。アリスをこっちに渡すんだ」
「何を言っている。私は私の役目を果たしているだけだが」
「そのような役目、女王の権限で降ろさせて差し上げます」
「フン。相変わらず傲岸不遜なコンビだな」


・・・・・なんか、また俺とばっちり受けそうな予感がするぞ。





Play by Wonderland 10







優雅な森のアフタヌーンティーパーティー会場は、悲劇の戦場に塗り替えられた。
飛びかう弾丸。砲弾。はたまたミサイル。(どこから出したよ)
それのとばっちりを受けて、テーブルが砕け、椅子は粉々。ケーキは落下して、見るも無残なアリの餌。

「やめてくれ〜!!俺のケーキが〜!!」

泣き叫び訴えるガングロウサギの声は戦場の中心には届かない。
そして、嵐の渦の中心にいる3人は、人間の域を超えた戦いを繰り広げていた。


っていうか、凡人の俺にはいったい何をやっているのか。さっぱりわからん。


見てわかるのはいつまでたっても三人が動かないことくらい。
でも、何かが起きているのがわかるのは、キラと女王様の持ってる惨殺道具がコロコロと入れ替わり、帽子オカッパの腹がどんどん膨れているということだ。


・・・・・・・まさかと思うけど・・・・・・食ってないよな・・・・?


「フン。品のない味だな」
「く・・・・」
「この・・・」

にやりと不敵に笑う帽子オカッパに、焦る二人。
すごいぞ。あのコンビに堂々と渡り合ってる・・・・さすがは人外だ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・いい加減、この世界の非常識さにも慣れてきたな。自分。


「こうなったら・・・・・」

万策尽きたらしい。もはや丸腰のキラは、一瞬、俺を見た気がした。




ゾクゥッッ




まずい。悪寒がする。





「目標を奪取するまで!!」



ぎぃぃぃいぃぃああああああああああああああ!!!!
やっぱ来やがったぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!



高速で俺へと迫るキラへ、こっちも全力で逃げ出す。
だって捕まったら・・・!捕まったら・・・・・本気で何されるんだ俺・・・・!!???


「カガリさん!!助けてくれよ!!」
「あいにくと私の役目は案内だけだ」

せいぜい頑張れ。と木の上でまどろみ欠伸を噛み殺すカガリさん。


くそ!殴りたい・・・・っ!!


だけど今そんな事をしていけば、今後の人生が終わりになる。


「うふふ。待ってよアリス〜」
「きめええええええええ!!!!!」


悦になって追いかけてくるキラに、心から叫んだ。


「逃がしません」


横から囁かれ、女王様が目の前を立ち塞ぐ。

「ひっ・・・・・・・!!」

瞬間移動みたいな素早さで現れた女王様を避けられるほどの距離と瞬発力がない。
目の前にいたのがキラだったら蹴りいれて逃げることもできるけど、さすがに女の子にそんなことはできない。


万事休す・・・・・!??


目をつぶった瞬間。身体が横に持って行かれた。







「・・・・・・・・え?」






誰かに抱かれている様な浮遊感。



「そこまでだ。二人共」


「なっ」
「う」
「ほう」




「・・・・・・・・・・・は?」





俺を救ってくれた恩人は、びっくりする程豪華に着飾って、さらに王冠をかぶった・・・・・・・アスランだった。





アリスの話的にも地位のそんなに高くないヒ―ローが登場(笑)














「二人とも、アリスを困らせるようなことをしてはいけない」


「うるさいよ」
「お黙りなさい」


カッコよく、慄然とした真摯な顔で言い放った生真面目は、一息後に両頬をグーで殴られた。


・・・・・・・・・まあ・・・・そうなるよな。





Play by Wonderland 11






「大丈夫かい?アリス。あんなセクハラ王に捕まって、ひどいことされなかった?」
「アリスに触らないでくださいな。汚らわしい」

「お前らっ一応俺は王なんだぞ!!」


俺を挟んで愛で始める二人に、結構タフだったアスランは起き上がって抗議した。
なんだこの扱いは!!と嘆いているけど・・・・うん。まああんたじゃしょうがないよ。

「それに、お前たちがどんなに引き留めたって、アリスが帰ると望んでいるならどうやったって帰ってしまうだろう」

「それは・・・・」
「そうですけど・・・・」

説得にしゅんと俯いて俺を見る二人。
一応王様って地位をもらっただけあって、二人には多少影響力があるらしい。
この中じゃ一番最弱に見えるのに・・・・

キラと女王様はお互いに目で頷きあって、俺から離れた。

「残念ですけれど」
「アリスに嫌われたくないからね」

いや。十分あんたたちの行動は、俺に嫌われる要素盛りだくさんだったぞ?
と、言ってみたい。
けどそれは声にならなかった。

二人から両頬にキスされて、頭が真っ白になったせいだ。


あ・・・・・・・・あっさり終わってくれたのはいいけど・・・・・・・今のが一番ダメージ高かったぞ。


くらくらする頭を抱えて離れていく二人を見送ると、今度はアスランが目の前に来て跪いた。


「アリス。君に会えたこと。この世界に来てくれたこと。とても感謝している」


優しく顔を緩ませたそいつは俺の手を取り―――――――――――――――


「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」







こいつ・・・・・・・!!
俺の手にキスしやがった・・・・・・!!!!!


うわっおぞましいっっ



「君に会えたことは、私たちの誇りだ」


鳥肌全開の俺へ、さらにそんな寒いセリフを吐いてきて、ますます身の毛が凍りつく。



「「「さようなら。アリス」」」



そして俺は、背後から何かに飲み込まれた。













「うわあああああああああ!!!????」

あまりの衝撃に飛び起きると、そこはオーブ施設内のあてがわれた部屋だった。
息がうまく整えられないし、身体は暑くもないのに全身びっしょりだ。

・・・・・・・・な・・・なんか、ものすごく恐ろしい夢を見た気がする。

それもめちゃめちゃ寒気が走る最後だったような・・・・


くらくらする頭とふらつく身体を起こして、外に出る。
もうすっかり朝だったため、人がまばらに行きかっていた。
そしてシャワー室の前まで来ると、その近くでキラとカガリさんが立っていた。

まだ俺に気付いていない二人は、談笑し合っている。


「なんだか機嫌がいいな。キラ」
「ふふっ、すっごくいい夢を見たんだ」

そしてキラが、その夢の内容を話す。

それを聞いた瞬間、無性に腹が立って。


手始めに俺は、キラの横顔をグーで殴りつけた。




END





これにてアリスネタ終了です!
次は何やろうかな!