<お酒は20になってから 酒で失敗するのは若いうちまで>




酒の匂い。
浮遊感。
それなのに意識は遠くなっていくような。
自分の行動と状態が正しく認識できない状態だ。

どうしてこんなことになっただろう。と、シンは遠い目をして考えた。

簡潔に言うならそれが酔っぱらったということだろう。
人生初の酔いはシンに新しい感覚を教えてくれた。

そして散々言われている真理を実感することになろうとは思いもしなかった。



酒は飲んでも飲まれるな。


先人はよく言ったものだ。



そして物思いにふける原因になった、ひっつき虫を見る。
またたびに酔う猫。主人に構われたくてすり寄る犬のようなは、シンにとって衝撃的だった。

「お前…そろそろ離れろよ」
「や〜だ〜」

絡み酒の化身となったは、シンに終始べったりとくっついて離れない。

シンはここが自室でよかったと心底思った。
そして酒を評判のジュースと偽って渡したヴィーノ達を恨んだ。
あいつらが酒を渡さなければ、こんな目に合わなくて済んだのに。

(ま…でも、悪い気はしない・・けど)

兄として生まれた性か、人に甘えられるのは悪い気はしない。
自分が甘えることが苦手な分、受け入れるは得意だ。
特に、いつも自分を甘えさせようとしているこの友人に、逆に甘えられているという状況は、なんだか自分が優位に立ったようで、酒の力も相まってシンは少しの優越感に浸っていた。

「シン〜」
「こら、だらしなく凭れるな。こっちが疲れるだろ」
「すき〜」
「・・・っ!!」

ぶわと毛穴が開く感覚に、シンが動きを停止させると、まんまとはシンを押し倒し、床に転がった。
そのままどちらが抱き枕かわからない状態で、はシンの胸元に頬をすりよせる。

「こ・・・の・・・! 酔っ払い!!」
「むー・・・ふふふ。 シンすきー」
「だからそういうこと言うなよな!! このばかぁ!!」

んなこと言われたら抵抗できないだろうが!!
こっちの気も知らないで!

そうしてお約束通り、シンは二度と自分がいないときにに酒を飲ませることを禁止するよう誓い。
は翌日、酷く痛む頭を抱えながら、こんこんと説教されるのだった。






END