「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

お互いにお辞儀をしてそう言いあい顔を上げると、キラがにこにこと嬉しそうに笑っていた。
多忙の1年だったけれど、こうして新年を一緒に迎えられたのは、奇跡だった。
年末まで仕事に追われていたせいか、そのうちキラが切れて突撃を仕掛けてきそうな雰囲気があったのだが、どうやらそれはなんとか耐えられたらしい。

「この後みんな来るんだよね」
「そう。日の出見るために」

海沿いの別荘に集合と言うことでみんなと話はついている。
クリスマスから利用して、またここ。休暇をもらって新年までみんなで過ごすって手もあったんだが、さすがにそれは仕事の都合上無理だった。
イベントごとに休みが取れただけましかもしれない。

「来年はとずっと一緒にいられたらいいな。神様にお願いしたら叶えてくれるかな?」
「そういうのは、上司に直接言った方が早いんじゃないか」

まあ、望みは薄いだろうけど。

「最近忙しすぎるよ。とイチャイチャできなくて辛い。毎日でもしたいのに」
「それは日常にしなくていい」
「・・・イケズ」

唇を尖らせて拗ねるキラに、俺は無表情で目だけを細めた。
毎回毎回。こいつの俺欠食っぷりは最悪だな。まったく。

「キラ、こっち」

手招くと、キラは顔を明るくさせて近付いてきた。
その体を肩から引いて、腕の中に収める。

背中に腕をまわして、首へ顔を埋めると、驚いたのか体がびくりと跳ねた。
しばらくそのままでいて、身体を離すと顔を赤くしたキラが、完全にきょどって俺を見ていた。


「こういうのは、たまにだから刺激になるんだろ」


にやりと人の悪い笑いを浮かべれば、いっぱいいっぱいな様子で相貌を崩したキラが、耳まで真っ赤にしてぎゅうぎゅうと抱きついてきた。
その頭を撫でてやれば、もっとと強請る様に頭部をすりつけてくる。


「ところで、今度の企画、キラに頼みたいことがあるんだけど」
「なんでもするぅ・・・・」


ごろごろと喉を鳴らそうかというような様子に、俺はにやりと見えないようにうす笑った。



その後、キラが「だまされた!!」と年末以上の忙しさに駆られて切れて泣いていたが、その理由を知る人間は、誰もおらず、俺はキラの面倒を見ない解放感を満喫していた。