1/1 「あけましておめでとうございます」 「あけましておめでとう!」 ヤマト家のインターホンを押し、向かてくれただろう家主へ頭を下げて年始のあいさつをしたアスランは、まだ聞くことはないだろう声に迎えられて、顔を上げた、 「なんでもういるんだカガリ」 「昨日から泊まってたからな。ラクスもいるぞ」 そうして勝手知ったるなんとやらで、堂々とアスランを先導するカガリに、アスランも苦笑いした。 まあ、もう毎年のことなので慣れるのは早い。 居間へ行けばおせちが詰まった重箱がテーブルに並んでおり、カリダがお雑煮を並べているところだった。 「いらっしゃい。アスラン君。あけましておめでとうございます。」 「おめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。」 「ふふ。こちらこそよろしくね」 快く迎えてくれる笑顔に、心が癒されつつ、進められるままに席に着いた。 そうしてふと、人数が少ないことに気が付いた。 「キラとは、どうしたんですか?」 「あいつらは今餅付きに行ってるぞ。鏡餅をもらいにな」 「鏡餅?」 「もうすぐ戻ってらっしゃると思いますわ」 同じく席についていたラクスが言い、カガリがそれに付け足した。 「近所の神社で餅つきを毎年しているんだ。抽選らしいんだが、今年は当たってな。それをもらいに行ってる」 「なんでここの住人のように話すんだ・・・」 「何を言っている。ここは第2の実家だぞ」 ドヤ顔で胸を踏ん反り返すカガリに、アスランはただただ脱力するだけだった。 「そーぉれ!よいしょお!」 掛け声とともに槌が振り下ろされ、木の臼に投入されたもち米がつかれていく。 「気持ちが盛り上がるね」 「そーだな」 神社関係の人たちがあわただしく複数の臼と槌を使って餅をついているのを眺めながら、ヤマト兄弟は配布されている甘酒とお汁粉を飲んで暖を取っていた。 まだ朝方早いため、なかなか日の光が当たっていても周りは空気が冷たく、外でじっとしているには辛い。 篝火にあたりながら甘酒をもう一口口に含んでふと別の、本殿のほうへ目を向けると、丁度そこに見知った顔が並んでいて、は「あ」と声が漏れた。 「あ」 「どうかした?」 向こうが気づいたのと、隣のキラがの向く方向に首を回したのは同時だった。 「あ」 最後にキラが声を漏らして、全員が目を合わせた。 「あけましておめでとう。シン、レイ」 「あけましておめでとう。奇遇だな」 「そうだね。ここの神社、君たちの家から離れているでしょ?」 「ヤマト家に行く前にお参りしたいとシンが言ってな。」 「とキラさんはどうしたんだよ」 「僕たちは鏡餅をいただきに来たんだ」 「へえ」 シンとレイの表情が物珍しさに輝く。 そのまま4人で待つことになり、両手の平サイズの鏡餅を頂いて帰宅することになった。 あの頃、こんなに穏やかな時間を過ごすことがまた出来るようになるなんて思っていなかったのに。と、は今までを振り返る。 悲しいことも、辛すぎることも乗り越えて、誰もがよりよい未来にしようと進んだ結果が、こうして形になっていることが、とても感慨深い。 「、老成した顔してるよ」 「どんな顔だ」 隣を歩くキラがの顔をそう指摘して、意味が分からないは顔を歪めた。 そんな弟にもキラは楽しそうに、嬉しそうに笑うだけだ。 そして、の腕をつかみ、そのまま腕をたどって手を、指を絡ませて繋いだ。 「今年も、来年も、いい年になるといいね。いい年にしようね」 「・・そうだな」 いつだって、自分が幸せになるためには自分自身が動くしかないから。 傷ついたって、誰かと別れることになっても、何かを失うことだって、自分が進まなければ、何かを起こすことはできない。 「少なくとも、僕はもうちょっととの関係を進展させたいなー」 「レイー、シンー。今日ってうちに泊まっていくのかー?」 ほほを赤らめる色ボケの拘束をほどいて友人2人へ声をかけると、「いけずぅぅっ」っと非難の声が上がった。 いつものことなので、誰も反応しなかった。 ※2013、2014年の正月拍手でした。※ |