<キラの嘆き 初級編> 「に、会いたい……っ……!!」 戦闘艦アークエンジェルの食堂で、キラは今食べ途中のニンジンを刺したフォークを持ったまま拳を振り下ろして呟いた。 いや、そこにいた全員が彼の言葉に振り向いたのだから、呟くというのは間違いかもしれない。 そして当の本人は拳を握ったままブルブルと震えている。 ニンジンの刺さったフォークを見て。 「もう耐えられなーい!!!!!」 全員が困惑する中で、フォークを投げ飛ばし、キラは隣で食事を取っていたカズイに突っかかった。 災難なのはカズイだろう。 ぶち切れたキラに揺すられ続け、半分魂が飛ばされていた。 「キ、キラ。落ち着けって」 誰もがドン引いている中で、キラを止めようとした勇者はサイだった。 カズイを助け、何とか宥めようとするのだが、キラはキッと涙目でサイを睨みつけ。 「だってに会えないんだもんっ 顔も見れないんだもんっ しょうがないだろ!!」 なんて駄々を捏ねてきた。 その後はただ「会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい」と呪いのように呟くばかりだ。 はっきり言おう。 本気で恐ろしい。 キラのブラコンを身近に知っている友人たちは溜息を吐き、知らないクルーたちは、ただただ自分たちのエースパイロットの異様な行動に唖然となるしかなかった。 「仕方ないわね。いつかこうなると思っていたけど……」 そして、光明を上げたのはミリアリア。 彼女は懐から一枚の紙を取り出し、キラに向かって投げ放った。 蛇足だが、その時のミリアリアは必殺必中のスナイパーさながらで、投げた紙はキラの元へ恐ろしい速さで飛んでいったことを記述しておく。 その高速で投げ出された紙はキラの手に収まる(何人かが拍手していた)。 その紙を見たキラは、 「〜〜vvv」 <相貌をまるで初孫を可愛がり愛でるおじいちゃんのようなだらしない笑顔で、紙に頬擦りし始めた。 「ミリアリア。何をやったんだ……?」 キラの態度の変わりように、トールが聞く。 「弟君の写真よ。前にキラが落としたのを拾ったの」 肩を竦めて言うミリアリア。 たった一枚の写真で機嫌が浮上するキラもキラだが、それを常に懐に持っていた(かもしれない)ミリアリアにも何か得体の知れないものがある。 その一種異様な一連を見てしまった一同は、もはや誰も言葉も出せず、しばらくその場で立ち尽くしていた。 とりあえず、キラの機嫌はミリアリアによって保たれた。 以後、キラが弟のことを極力思い出さないようにさせることが、クルー内での暗黙の了解になったとかならないとか。 |