バレンタイン☆ネタ




「ああ?チョコレート?」

とある日。・・・・というか恋する少年少女の一世一代の大勝負をかけた日の、とある昼下がり。
毎年大量に貰うこの少年。アスランは、目の前の少年の言葉に目を丸くすることになる。

「貰ってねぇよ」

少年――はそう言ってアスランを睨め付けた。

「なんだよ当て付けか?」

もともとこの少年に好意など一度も向けられた試しはないが、今日が今日だけに、そして自分が持っている両手でやっと抱え込んでいる贈り物のために、一段と睨まれている。
それが気にならない訳ではないが、の言葉のほうが驚きだった。

なにせ噂に疎い(本人に自覚はない)アスランさえ周知なほどに、彼は人気者の一人だ。
影ながらに好意を寄せている異性も少なくない。

「本当にか?」

信じられずにもう一度聞く。
それには「どこに持ってるって?」と両手を広げて聞いてきた。
荷物も何も持たない彼の服には、どこにも何かが入っているような膨らみはない。

「…そう、だよな」

確かに持っていない。
しかし信じられない。
クラスの女生徒が彼に渡すのだと言っていたのを聞いた。
がどこそこにいると駆けて行く少女たちを見た。


なのに誰一人彼に渡していない。





そしてふと過ぎったのは


(まさか…な)


そんなわけがない。









―――――――――と、思うものの、それはありえすぎて。






「キラ…」


そして彼は見てしまった。
ありえないと思いたかった。
一番可能性があるその光景を。


「! アスラン何?」


振り返ったのはの兄。
自他共に認めるブラコンの化身――キラ・ヤマト。

「今、お前何をしていた?」

聞くまでもない。

今彼は間違いなく、幼気な恋する少女を脅し折れさせたのだ。

「…秘密だよ?」

張本人は照れ笑って人差し指を立てた。
前の光景を見ていなければ、素直に頷くのだが。

「かわいそうだろうが。せっかくみんなが好意をだせる日なのに」
「だって!が万が一でも好きになったらどうするの!?」
「お前な…」

それこそ余計なお世話だろう。
というか、彼はどうやればこのブラコンを治せるのだろうか。

「僕より好きな人なんて…」

どす黒いオーラを放つキラに、アスランは溜息を吐いた。

「いつまでもそうは行かないんだぞ?」
「わかってるよ…気持ちの整理がついたらもうしないよ」

それでも、巣立っていくのはとても寂しいんだ。とキラは俯いた。


「!」


これで終わったか、とアスランが思う間もなかった。

「キラ?」

何かを見つけたキラは彼を残してすっ飛んで行った。



その先は・・・・


「ねぇ。それ誰宛てかな?」
「…」


(兄貴が離れるのは当分先になりそうだぞ)
こんな兄を持った弟に合掌した。


キラ・ヤマト
高ランクに入っているはずなのに人が寄り付かないその訳は、重度を通り越したブラコンゆえである。