目が覚めて、着替えを済ませてから会いたい背中を捜す。 リビングいたその背中を見つけるなり、僕はそこへ向かって飛びついた。 「おはよう、 !」 「っ・・・」 「あ・・・・」 ぱしゃんと水音がして、前をのぞくとテーブルに上にコーヒーがこぼれていて、 の手にはほとんどなくなったカップがあった。 呆然としてる間に はカップを置いて、近くにあった布巾でこぼれないように拭き取った後、僕の頭をゴツリと拳で小突いた。 「状況を見てからひっつけ、この馬鹿」 「ごめん・・・・」 叱ってくる へ、首を竦めて謝る。 でも は表面から見るよりも怒っていない事を知ってる。 それに。それにね。 今日は特別な日だもの。 「ふふ」 でれでれと口元を緩ませる僕を、 は可哀相なものを見る目で見つめてきた。 「変なスイッチでも入ったか?」 どうせバカな事なんだろうけど。って表情で付け足したみたいな冷めた顔して呟く 。 ふふん。ぜんぜん痛くないもん。 だって、今日は絶対に良い1日になるんだから! 「 、今日は何の日だか覚えてる?」 崩れた顔のまま訊ねると、 は呆れたように溜息してキッチンへ行ってしまった。 それに負けず、僕は の後をついていく。 「ね、 。 ? 〜」 後ろから のお腹へ腕を回して、 の背中へ擦り寄る。 「はいはい鬱陶しい」 布巾を洗い終わった が振り返り、僕の顔へ何かを押し付けた。 「うっ・・・?」 なんだかやわらかい感触。 手にとって見れば、梱包された袋だった。 中身が何かまでは分からないけど、きっと布製のものだろう。 でも、中身なんてどうでも良いんだ。 プレゼントから へ目を移すと、 はものすごく照れながらも、笑ってくれていた。 眉間にしわがよって怒ってるみたいに見えるけど、ちゃんと僕のことを想ってくれていることが分かる。 「誕生日おめでとう。キラ」 「ありがと! !」 が与えてくれる言葉と気持ち。 それだけで、僕はこの日に生まれたことに感謝できた。 そしてこの後はめくるめく、二人の時間・・・・ww 「って、思ってたのに!」 「はっはっは。詰めが甘いぞキラ!」 勝利者みたいに、カガリの笑いが部屋にこだまする。 朝食を片付けて、これから と何をしようかと悩む間もなく、三人が押しかけてきた。 『ハッピーバーズデイ』と謳われたけど、絶対それだけじゃないに決まってるんだ。 むっと口を結んで不満を露わにする僕に、カガリはますます笑みを深め、アスランはすまなそうな顔をし、ラクスは相変わらずの読めない笑顔で、さりげなく の近くを陣取っていた。 ああ!だめだよ !あんまりラクスに近付いたら食べられちゃう! なんて僕の思いは、 には全然届かない。 しかも可愛く首まで傾げちゃうんだから。 僕の前だったら全然構わないけど、他の人の前でそういう仕草しちゃだめだよ!攫えって言ってるようなものだよ? 「いいだろ?カガリさんだって今日誕生日なんだし。キラだって祝いたいだろ?」 「別の日だったら否定しないけど、今はすっごいバックレたい気分」 ラクスへ牽制の瞳を向けて、アスランになんで守らないんだよと、不満を殺気で伝えて、僕は言い放った。 「わがままを言うな、キラ!たった二人の姉弟じゃないか・・・・!」 だから、僕が言いたいのはそこじゃない。 僕の肩を抱く、分かってくれていない片割れをじっと見る。 するとカガリは僕に顔を寄せて、囁いた。 「安心しろ。ちゃんと夜には二人きりにしてやるから」 そしたら、お前の好き放題にすればいい。そう言われて、僕は本当に脳内で自分の好きなように を操ってみた。 『今日は・・・俺がプレゼントだぞ?////』 可愛く上目使いで、頬を赤らめ、目を潤ませて僕を見る、リボンでぐるぐる巻きな を想像する。 ベタは何にも増して萌えるってものだね。 「・・・・・・必ずだよ」 「もちろんだとも!」 念を押して言うと、ちゃんと僕を理解してくれていた片割れは、今日一番のイイ笑顔で親指を上げた。 そんな僕らのやり取りを見ていた三人は、 「・・・・・なんか、ものっすっごく嫌な予感がする」 「ああ、気のせいじゃないと思うぞ?」 「 、身の心配をなさっていらっしゃるのなら、わたくしの別荘にまいりますか?」 「・・・・いや、それもなんか怖いから・・・遠慮します」 「まあ、勘の鋭い方」 (・・・・・・・それ、どういう意味ですか・・・?) そんな会話をしてて、ラクスは絶対に今日中に何かしら対策を練らなければ持って行かれるな。と、確信した。 カガリと二人で頷きあう。 任せたからね。と心で呟けば、『任せろ』と耳の奥で聞こえた気がした。 「 〜それで、どこに行こうか?」 ラクスを引き離すためにに抱きついて、僕は今日という特別な日を堪能するべく、密かに戦いを始めるのだった。 <生まれた日は 戦いの日> |