<君へ贈る大切なもの 1>

 

黒の騎士団としての仕事も、生徒会としての仕事もない。
久々に、何もない週末だった。
それを利用して、ルルーシュは最近できなかった諸々の品の買出しをするため、ショッピングモールへと足を運んでいた。
いまだにテロは断続的に続いてはいるが、その規模は縮小していっている。
そのため疎開の中は平和そのもので、その際たる象徴は華やかに彩られた店舗と客の笑顔なのだろう。
家族連れやカップル、友人同士の集まりなどを横目に、ルルーシュは黙々と狙いの品を手に入れていく。
持ち運ぶには数が多かったので、大体のものは配送を手配した。
昔は居候の身で金銭面的に頼りなかったが、今は裏役とはいえ特区で働いている身だ。実入りを心配することはなかった。

(後は日用品と今日の食材だな)

事前に調べて書き留めていたメモに斜線を引いて、確認し、次の店へと向かう。

「ねーおねがいー!!誕生日プレゼントに買ってよー!」

そこで、小さな少年が父親にねだる光景が目に入った。
玩具店のショーウィンドウに飾られた玩具を指してねだる少年に、父親はしょうがないなと苦笑している。
この前は別のをほしがっていたのかそのことを尋ねると、少年は「あれよりこっちの方がいい!」と断言していた。
しかし子供の気持ちとは移ろいやすいもので、すぐに別のものへと興味が変わり、前のものに興味が戻り、しまいには全部買ってくれとせがむ。
その親子のやり取りに、ルルーシュは呆れ、さっさと通り過ぎた。
子供は欲深いとは言うが、ナナリーはあんなわがままな行動をとったことはないし、自分とていろんなものを我慢して生きてきた。
今と境遇が違うことは確かだが、それでも先ほどの子供があまりにもわがままに思えた。
だが、まあ、ナナリーならばどんなわがままだろうと許し、その願いをかなえてやろうと思うのだが。

(誕生日か・・・・今年はナナリーへ何を送るか・・・)

まだ渡すものも決めていないのに、渡す瞬間を考えて笑みが浮かぶ。
きっとナナリーの部屋か、生徒会室で渡すことになるだろう。
ナナリーはおそらく何を渡しても喜んでくれるに違いないが、それでも良いものを与えたい。
そして、会長やリヴァル、シャーリー、ニーナ、咲世子が祝福し、時にからかい、その場をにぎやかにしてくれるだろう。
そして、後から来たスザクも祝福をしてくれる。
それから・・・・・
そこで、ふとルルーシュは眉をひそめた。
自分の恋人であるライのこと。きっと彼は誰よりもルルーシュと同じ気持ちでナナリーのことを大切にしてくれている。
だからこそ、ナナリーのときも心から祝ってくれるだろう。
だが、その本人にいつプレゼントを渡せばいいのか、ルルーシュには見当が付かなかった。
恋人であるはずのライの誕生日を、ルルーシュは知らないのだ。

いや、おそらくライはそんなことをせずとも良いと言ってくるだろう。
他人に優しい彼は、自分のことに対して頓着をしない。
しかし、今ルルーシュがこうしていられること。自分を救ってくれたのはライなのだ。
復讐を捨てた訳ではないが、未来をつぶすことはしたくないと思わせてくれたのは。
ユフィの命を救い、自分の失敗を救ってくれたのはライだ。
こんな自分の傍にいてくれると言ってくれたのだ。
その礼も、感謝もルルーシュはすべて表せたと思えない。
ナナリーとは別の意味で、大切で、何にも変えがたい存在へ、自分の気持ちをアピールできるその場がないことが、ルルーシュの中で苦虫を噛み潰させた。
本人に聞けば、それはすぐに解決するだろう。
だがライには喜び驚いてほしかった。

(なにか・・・・ライの誕生日に変わる日はないのか・・・)

作戦を練る指揮官の顔をして、ルルーシュは思考に落ちる。
そして、思い立った日を確認するため手帳を開いた。






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