他にも生徒会のメンバーにライのことを尋ねてはみた。 だが、ルルーシュが知っていること以上の情報は得られなかった。 (ライの自分のことを表に出さない性質が裏目に出たな・・・) 自分の前でだけ現れるものがあることは恋人冥利に尽きるが、今は問題の種だ。
(これは・・・)
<君へ贈る大切なもの 3>
「え?」 その場にいる全員からの突然の祝福の言葉に、ライは一瞬呆然となった。 今日、非番となったライはいつものように朝起きて、リビングへ入った。 誰もいなかったそこで、突然背後から呼びかけられたそれに、ただライは驚いた。 「え・・と」 何が何なのか飲み込めないライは、ただ戸惑うばかりだった。 「会長、やっぱり説明しないとわからないですよ」 シャーリーとミレイが小声で喋り、ミレイがライへ向かって一歩出た。 「今日はね、ライ。貴方がここに来てから一年たったお祝いのパーティなのよ」 その言葉に、ライは目を瞬いた。 ・・・そうか、もう一年たっていたのか。 「事情はわかりましたけど、どうして僕の誕生日なんですか?」 納得がいってだいぶ状況は把握できたが、その理由がわからない。 「だってね〜、ライ記憶喪失で自分の誕生日なんてわからなかったでしょう?だから、こっちで勝手に貴方とあえた日を誕生日にしてみたの。 ミレイの説明に、ライは苦笑する。 「じゃあ改めてもう一度」
「誕生日おめでとう。ライ」
「ありがとう、みんな」 みんなの祝福に、ライは今度こそ笑顔で答えた。
「ライさん。おめでとうございます」 傍にいるナナリーからの祝福に、ライも目を細める。 「私、ライさんへのプレゼントがあったんです」 「はい」と頷いて、ナナリーは上を見上げた。薄紅色の小さな木の花びらがひらひらとライとナナリーへ舞い落ちてくる。 「ひょっとして、この木がナナリーのプレゼント?」 言われて、もう一度木を、花を見る。枝の重みでしなり、今にも届きそうな位置にあるその花をまじまじと観察した。 そうか、これが桜・・・ 桜の折り紙が折れても、実際に見たことは一度もなかった。 「桜は、母さんが大好きだと言っていた花なんだ。こんなに綺麗な花なんだね」 始めてみた母の愛した花。儚く見えるようでとても優しくまっすぐにあるその花が、目の前にいる少女と似ていると思う。 「ありがとう。ナナリー」 目の見えない彼女へ、たとえ表情が見えなくても伝わるように、ライは心からお礼を言った。 「ライさん。私、桜を見たことがないんです。だから、どんなものなのか教えていただけますか?」 二人は互いにくすぐったそうに肩を竦めて笑いあった。 next |